|
|
|
|
横尾愛
|
スポーツナビ
|
 |
PSG、悲劇の果てに……(1/2) 横尾愛の「ようこそフランス・リーグへ!」
2006年12月08日
|
 |
|
■パルク・デ・プランスで起きた悲劇
PSGサポーターが試合後、デルアビブ・サポーターを襲い、最悪の悲劇が起こった【 Photo:PanoramiC/AFLO 】
|
これまでスタジアムで試合を観戦していて、サポーターの行動に恐怖を感じたことが2度ある。どちらも、警官隊が威嚇射撃に踏み切った。1つはイタリアでのフィオレンティーナ対ミラン戦で、もう1つはパルク・デ・プランスで行われたパリ・サンジェルマン(以下PSG)の試合だった。前者は敵対するチームのサポーター同士によるぶつかり合いだったが、後者はそうではない。スタジアムを出たところで、警官隊をあおるPSGサポーターたちに巻き込まれてしまったのだ。集団心理の恐ろしさを思い知った気がした。
“ブローニュ”“オートゥイユ”と呼ばれるパルク・デ・プランスの2つのゴール裏スタンドのうち、11月23日の悲劇で一躍有名になったのは“ブローニュ”の方である。この夜行われたUEFAカップのグループリーグ第3節、PSG対ハポエル・テルアビブ戦の後、1人で歩いていたテルアビブ・サポーターをPSGサポーターが襲撃。止めようとした私服警官が発砲し、PSGサポーターの1人が死亡、1人が重体という惨事を引き起こした。悲劇に追い討ちをかけたのは、パリで問題視されていた人種差別的行動が絡んでいたことである。襲われそうになったテルアビブ・サポーターはユダヤ人であり、私服警官は仏領マルティニク出身の黒人だった。
パルク・デ・プランスにおけるウルトラス、つまり過激なサポーターたちの評判は非常に悪い。もちろん、「良識的行動で知られるウルトラス」というのは聞いたことがないし、パリに限らずマルセイユ、サンテティエンヌなど観客動員数が多いクラブであればあるほど、悪名高いウルトラスの存在率も高い。だがパリのウルトラス、中でもブローニュに陣取る彼らは、暴力行為やサポーター・グループ同士の抗争で、フランスでも指折りの悪評をとどろかせているのは事実だ。今回の事件もブローニュのサポーターたちが中心になっており、亡くなったジュリアン(25歳)も、このゾーンの常連だった。
■なくならない人種差別問題
フランス共産党の党首であるビュフェ氏は、「このような問題に対して効果的な措置が取れないのなら、PSGは無観客試合でシーズンを終えるべき」と、ブローニュどころかパルク全体のサポーターによる「全体責任」を強調した。結果としてクラブは、ブローニュの一部を閉鎖することになったが、本当にブローニュは、恐ろしい過激派たちの巣くつなのだろうか。 一言に「ブローニュ」といっても、そこにいるサポーターたち全員が問題を起こすわけではない。反対側のゴール裏、オートゥイユのグループ「ティグリス・ミスティック」と、昨季アウエーのナント戦で内輪もめを起こした「ブローニュ・ボーイズ」は、約1000名のメンバーを抱えるPSG最大の、れっきとしたクラブ公認団体。ティグリスが郊外出身者のグループであったこと、またブローニュ・ボーイズから派生した少数派がネオナチ系の思想に傾倒していたことで、「オートゥイユvs.ブローニュ」=「移民のオートゥイユvs.国粋主義者のブローニュ」と飛躍した図式でとらえられがちだったが、厳密に言えばこれも間違いだ。ティグリスもブローニュ・ボーイズも、いかなる政治的ポリシーも持たないことをモットーとしていた。なお、ティグリスは今年の7月に解散している。
実際のところ、「パリのサポーターは、仲間同士で仲が悪い」というのは本当だ。しかしこれも、本質的には政治とは関係がない。1985年、ベルギーで起こった「ヘイゼルの悲劇」(欧州チャンピオンズカップ決勝戦、リバプールvs.ユベントス戦でのサポーター同士の衝突で死者39名、負傷者400名以上を出した大惨事)によって、それまでアウエー・サポーターも入場可能だったブローニュは、完全にPSGサポーターだけのものになり、この年にブローニュ・ボーイズは誕生した。ところが、彼らはフーリガニズム全盛の時代に乗って、暴力行為の限りを尽くす。 何とかこれを解決しようとしたのが、1991年、PSGの筆頭株主となった有料テレビ局カナル・プリュスである。ブローニュに常駐する過激派たちを分割してしまおうと奮闘した結果、一部が補助金を受け取ってオートゥイユへ“引っ越す”ことを承諾した。残ったグループから見れば「金に目がくらんだ奴ら」であろうし、移ったグループから見れば「おれたちは、違うやり方でクラブへの忠誠を示してみせる」という意気込みもあっただろう。現在、オートゥイユには公認・非公認含めて4つのグループが、そしてブローニュには5つほどのグループが存在している。彼らが燃やしていたのはライバル心であり、敵対心ではなかったはずだ。少なくとも最初は。
というのも、ブローニュで変わらない現象の1つが、やはり人種差別問題だからである。ナチス式敬礼、黒人選手への差別発言を繰り返すのは、どのグループにも属さない「アンデパンダン」と呼ばれる少数派だ。「独立している」という意味の通り、彼らはクラブ非公認の立場であり、シーズンチケットを買う際にも、偽の身分証明書を提示しているといわれる。ただし誤解のないよう付け加えると、オートゥイユにもアンデパンダンはいる。恐らく、ブローニュ・ボーイズの正式なメンバーの中にも、「隠れアンデパンダン」や「アンデパンダン予備軍」はいるだろう。目に見えるブローニュのアンデパンダンばかりが注目されるのは、昔の典型的なフーリガンの生き残りと、それに憧れる若者たちが活動の中心になっているからだろうか。
<続く>
◆前後のページ |1|2|
関連リンク
・三者三様の戦いを見せるフランス勢 06/11/09(横尾愛) ・ダービーの復権はなるか 06/09/20(横尾愛) ・ベテラン勢の活躍で幕を開けた新シーズン 06/08/15(横尾愛)
|
サッカーに関するブログエントリ
|
 |
|
|
|