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横尾愛 スポーツナビ

三者三様の戦いを見せるフランス勢(1/2)
横尾愛の「ようこそフランス・リーグへ!」


2006年11月09日

■厳しい“レッスン”となったCLでのボルドー

ボルドーの“顔”ミクーも、リバプール相手には違う顔を見せることはできなかった ボルドーの“顔”ミクーも、リバプール相手には違う顔を見せることはできなかった【 Photo:PanoramiC/AFLO 】
 欧州チャンピオンズ・リーグ(以下CL)のグループリーグ第4節が終わった時点で、フランスを代表して出場している3チームは、見事に違う道を歩むことになった。無失点のまま4戦全勝でリーグ突破を決めたリヨン、決勝トーナメント進出への戦いを続けるリール、そして1分け3敗の無得点でCL敗退となったボルドーである。

「僕らが違う顔を見せられなかったのが残念だ」とGKラメが言うように、特にボルドーにとっては非常に厳しい“レッスン”となった欧州の舞台。浮上のきっかけをついにつかめないまま、ボルドーは目標をUEFAカップ出場に切り替えることになった。
「あのチームは前半と後半で違う顔を見せた」といった具合に、「違う顔を見せる」というのはフランスでよく使われる表現だ。今シーズン最大の補強であり、それこそボルドーの“顔”的存在であるミクーも、リバプールを相手に違う顔を見せることはできなかった。

 リーグでも、勝ったと思えばまた負けるの繰り返しで、不安定な今季のボルドー。開幕2連勝を飾って以来連勝はなく、連敗も1つのみ。あれほど得意(?)だった引き分けも、まだ1つもないというシーソーぶりである。負傷者が続出してメンバーをなかなか固定できなかったことも、波に乗れなかった大きな要因だ。そして何より、“プレーメーカー”として期待されていたミクーが本領を発揮できていないのを見て取ったリカルド監督は、とうとう第9節のモナコ戦でシステムを変えてきた。ミクーが先発する時には必ず1トップだったところを2トップにして、中盤をひし形にしたのである。もっとも、この決断を下したのは「出られない選手がたくさんいたからでもあるんだけどね」と、リカルド監督は『レキップ』紙に明かしている。苦しい台所事情のおかげで、かえって早く解決策が見つかったというわけだ。
 
 ともあれ、そのモナコ戦で1−0の勝利を飾ったボルドーは、そのまま自信を持ってCL第3節、第4節と連戦でのリバプール戦に臨んだ。しかしながら、選手たちも口をそろえて「この方がやりやすい。ジョアン(ミクー)が生きる」と絶賛しているシステム変更も、劇的にチームの顔を変えたわけではなかった。ホームでの第3節では、クローチのヘディングで1点をもぎ取られて0−1。第4節ではMFフェルナンドがリーセへの頭突きで一発退場となり、最終的には0−3で完敗したのである。

 システムを変えた分、ボルドーはまだお互いのコンセンサスがきちんと取れていない印象だった。例えば、2トップの一角がすぐに縦に下がって来てしまうため、ミクーがサイドに流れる。ところが、流れたサイドの選手が猛然と上がってくる。細かいパス交換がそこでできれば、また話は別なのだろうが、あいにくと自分で持ち込んで打とうとする。ミクーはよけるために相手の守備ラインに吸収され、結局は狭いところでこぼれ球を拾い、難しいシュートやパスを狙わざるを得ない。あるいは逆に、サイドMFが1人になった守備的MFをフォローするのに忙しく、いいタイミングで上がってこない。すると、これまた2トップの一角がそこに下がってきて穴を埋めるしかなく、2トップにした意味がなくなる。吸収されているミクーにしても、ボールに触れなければ「今までとは違う顔」も見せようがないのである。
 だが、ミクーのプレーエリアが前過ぎる、左サイドのベンデウが上がり過ぎる、フェルナンドは下がり過ぎる、といろいろ言ってみたところで、やはりボルドーはミクーのチームである。リカルド監督がミクーを中心に据えている以上、違う顔を見せなくてはならないのは、ほかの選手たちなのかもしれない。

■10人で戦い続けたリール

 さて、ボルドーが涙をのんだ一方で、CL第4節でAEKアテネと対戦したリールも苦い敗戦を味わっていた。この試合では、クラブ史上初のCL勝利を狙うアテネが、本来は右サイドのDFであるゲオルゲアスを左で使ってきた。3−1でリールが勝利した第3節で、右サイドからDF3人を振り切って鋭いクロスを入れ、まったく同じようなゴールを2つも演出したコートジボワール代表MFケイタを抑えるためである。
 確かに、独特のドリブルで跳ねるように走るケイタをつぶすのは難しい。それに加えて、ケイタはプレーするサイドを変えても、スピードもキープ力もほとんど変わらない。ついでに言えば、仕掛けてくるプレーもあまり変わらないのだが、「こう来ると分かっているのに止められない」タイプの選手だ。ある意味「違う顔を持たない選手」だといえるが、対戦する側としては厄介なことこの上ない。

 CLグループリーグの最終節が、アウエーのミラン戦となるリールとしては、少しでも早めに結果を出しておきたいところだった。ところが、リールに思わぬアクシデントが襲い掛かる。開始3分でゲオルゲアスに対するファウルを取られ、イエローカードをもらっていたセンターバックのタフラリディスに、2枚目のイエローが突きつけられたのは前半22分。まだたっぷりとある残り時間を、リールは10人で戦うことになってしまったのだ。
 だがピュエル監督は交代のカードを切らずに、そのまま続行する作戦に出た。トップ下のMFボドメールをセンターバックに下げたのである。急造DFのボドメールは、カウンターで左から放り込まれたクロスに対しても、きっちりとヘディングでクリアするなど落ち着いたプレーを見せる。一方で空いてしまったトップ下のポジションは、FWオデムウィンジーと守備的MFマクーンがうまくバランスを保ちながら上下に動いてスペースを埋め、数的不利を感じさせない。そしてケイタは、味方のオデムウィンジーからでもボールを奪って早くシュートを決めたいとばかりに、さらに積極的にゴールへと向かっていった。しかし、アテネGKソレンティーノもしっかりと守り切り、前半は0−0で終了した。

 後半になってもリールは足を止めずに攻め続けたが、決定的なチャンスをどうしても決められない。ゴール中央でパスを受けたオデムウィンジーは素早くアテネ守備陣に寄せられ、ケイタがGKと1対1になったチャンスも、シュートはわずかに右へそれていく。そしてとうとう74分、マクーンをかわしたリベロプロスにミドルシュートを許し、リールはアテネ・サポーターの歓喜の雄たけびを聞くことになったのである。

 なお、後半が始まっても、センターバックの交代は告げられなかった。実は、ボドメールはリールでは攻撃的な役割を任されているが、もともとは守備的MF。そして、プロデビューを飾ったカーンに所属していた頃は、センターバックとしてプレーした経験も持っているのだ。弱冠23歳のボドメールが持っていた「違う顔」に助けられて、リールは戦い続けた。そして、そんな器用なボドメールの欠点としてよく挙げられるのが「決定力不足」だという事実も、この夜のリールには実に皮肉な話であった。

<続く>


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