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天皇杯 第84回全日本サッカー選手権大会 Yahoo!スポーツ
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宇都宮徹壱の天皇杯漫遊記
半そで姿で堪能した1回戦(1/2)

2004年09月24日
宇都宮徹壱

JR韮崎駅を訪れると、サッカー少年の像が出迎えてくれる
JR韮崎駅を訪れると、サッカー少年の像が出迎えてくれる【 photo by 宇都宮徹壱 】
■天皇杯には日本サッカーの「ほとんどすべて」がある!

 秋分の日の23日、私はカミサンと連れ立って9時00分・新宿発のあずさ9号に乗り込んだ。目的地は山梨県韮崎市にある、韮崎中央公園陸上競技場。今日はJリーグでも好カードが目白押しであったが、私はあえて、この日から開幕する天皇杯の1回戦を観戦することにした。ご存じの通り、今大会から天皇杯は9月下旬から開幕する。私は半そで姿、そしてカミサンはノースリーブで観戦する天皇杯――去年までは考えられない、わくわくするようなシチュエーションではないか。そして今日の対戦カードは、帝京第三高校対ホンダロック。われながら、実に渋いカードである。

 さて、今年で第84回を迎える天皇杯全日本サッカー選手権。当連載では、本日9月23日から来年の元旦まで――すなわち1回戦から決勝までを取材し、そのレポートを皆さんにお届けする。この秋から冬にかけては、日本代表戦をはじめ重要な試合が幾つか控えているが、今年の天皇杯に関しては諸国を漫遊しながら、すべての日程を網羅するつもりでいるので、乞うご期待。
 それにしても、なぜ、天皇杯なのか。これまで、この大会を単なる「サッカー界・年末年始の風物詩」的にしか見ていなかった私が、なぜに今年に限って、この日本最古のカップ戦をしゃかりきに取材する気になったのか。もちろん、理由がある。天皇杯という大会のアウトラインを確認する意味も含めて、まずはその点について言及しておきたい。

 今年の私は、UAE、中国、そしてインドと、アジアでの取材が続いた。来月にはオマーンにも行くし、来年にワールドカップ・アジア2次予選もある。そうやって、アジアの国々におけるサッカーのあり方をつぶさに観察しているうちに、今さらながらに私は、わが国のサッカー界の現状をおさらいしておく必要性を痛感するに至った。それも、できるだけ効率的かつ広範囲に。もちろん、Jリーグや日本代表の試合を通して、見えてくるものはある。だが、それらは日本サッカー界のトップレベルの現場であって、すべてではない。そこで、あらためて私の中で浮上してきたのが、天皇杯だったのである。

 そう、天皇杯には日本サッカーの「ほとんどすべて」がある。Jリーグ、JFL、地域リーグ、そして大学、高校――換言すれば、少年サッカーと女子サッカー以外の「ほとんどすべて」を包括した大会、それが天皇杯だ。しかも、UEFAカップとほぼ同じ80ものチームが「元旦・国立」というクライマックスを目指し、日本各地の競技場でノックアウト方式の試合を行うのである。そう考えると、日本サッカー界の現状をおさらいする意味で、これほど効率的かつ広範囲でドラマティックな取材対象も、そうそうないだろう。


■天皇杯の楽しみがいっぱいの1回戦

ピッチがとても近く感じられる、韮崎中央公園陸上競技場
ピッチがとても近く感じられる、韮崎中央公園陸上競技場【 photo by 宇都宮徹壱 】
 そんなわけで、あずさ9号に揺られること、およそ2時間。私たちはこの日、関東地方唯一の会場となった韮崎中央公園陸上競技場にやってきたわけである。メーンスタンドしかない、地方都市によくある小さなスタジアム。だが、周囲にトラックがあるにもかかわらず、実にピッチが近くに感じられるのがうれしい。もっとも、当日券が1500円もするのに、周囲からピッチが丸見えという状況は、ちょっといただけない。それに競技場の時計は手動式で、係員が5分おきに時計の針を進めるという、恐ろしく原始的なものだ。そんな牧歌的風景満載のピッチから、あの中田英寿がJリーグへ、そして世界へと飛び出していったのだから、何とも不思議な感慨が沸き起こってくるのも無理はないだろう。

 その「世界のナカタ」を輩出した韮崎高校と、県内で覇を競っているのが、今大会が初出場となる帝京第三高校である。同校のホームページによれば「1988年(昭和63年)サッカー部創部。関東大会6回出場、全国高校総体4回出場、全国高校選手権6回出場の成績を収めている」とのこと。ユニホームは、本家・帝京と同じブラジル・カラー。メンバー表を見ると、FWで10番の平井雅浩君は、何と15歳の1年生である。おそらく今大会の最年少だろう。いったい大人相手に、どんなプレーを見せてくれるのか。

 対する宮崎代表のホンダロックは、本田技研の連結子会社。イモビライザーシステムやステアリングロックスイッチなど、車やバイクのセキュリティ部品を開発・製造している。サッカー部がスタートしたのは、会社設立から2年後の1964年(昭和39年)。97年に2度目の九州リーグ昇格を果たすと、会社の福利厚生組織から完全独立し、99年に初めて宮崎代表として天皇杯に出場、今回が4度目の登場となる。ユニホームは、これまた本家・Hondaと同じ赤一色。この日は、社員とその家族と思しきサポーターが、そろいのレプリカとマフラーを身にまとい、応援に馳せ参じていた。
 注目は何といっても、あの城彰二の実弟・城和憲である。ポジションはトップ下。2年前の高校選手権(当時・鹿児島実業)でのプレーを最後に、その姿を見ることがなかっただけに、この偶然は正直うれしい。こうした「予期せぬ再会」も、天皇杯の楽しみだ。

 余談ながら、このホンダロック。スタジアムに貼られている横断幕が突っ込みどころ満載で、ついついメモを取ってしまうほど面白い。この機会に幾つか紹介したい。

「異国の血だ! 決めろ左クロス! 白川伸也」
 白川選手はハーフなのか? 双眼鏡で観察したが、どう見ても生粋の日本人だ。
「敵をあざむけ! ミラクルプレー! 久保田直樹」
「あざむけ!」という命令形が、非常にキュートである。
「世界最高峰のサイドバック 佐藤謙次」
 どうやら九州リーグは、われわれの想像以上にレベルが高いらしい。
「パパがんばれ! 走れドリブル! 永里匡史」
「パパがんばれ!」は、まあいい。だが「走れドリブル!」とは、いかがなものか(「走れドリブラー!」なら、まだ理解できるのだが)。それとも永里選手は、チームメートから「ドリブル」と呼ばれているのだろうか。まるで『太陽にほえろ!』ではないか。

 こうしたローカル色豊かな横断幕の鑑賞もまた、天皇杯ならではの楽しみである。

<続く>


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