日本が目指す「美しい体操」 世界へ躍進する女子、男子は団体金へはあと一歩か (1/2)
■目を見張る日本女子の進化
2011年4月23〜24日、東京・代々木第一体育館にて行われた第65回全日本体操競技選手権大会を観戦した。この大会は、今年10月に東京で行われる世界選手権の予選会も兼ねた重要な試合であり、国内のトップ選手のほとんどが出場している。
日ごろは新体操を主に追っている私にとって、この豪華な試合の中でもっとも印象に残ったのは、日本の女子選手たちの「美しさ」だった。日本女子の体操競技といえば、04年アテネ五輪のときは団体出場すらかなわず、常にメダル圏内にいる男子には大きく水を開けられていた時期が長かった。それが、08年の北京五輪で久しぶりの団体戦出場を果たし、なんと団体決勝にも残った。そして、決勝では順位を上げ、団体5位という大健闘を見せたのだった。
たしかに北京五輪で見た日本の女子選手たちは、海外の選手にひけをとっていないように私には見えた。私が熱心に五輪の体操を見ていた時代(コマネチが活躍していた時代)の日本選手は、ルーマニアや当時のソ連の選手たちと「同じ土俵で戦っている」ようには見えなかった。いわゆる難度の差は歴然としており、たとえノーミス演技ができたとしても、高い点数は出ないだろうというのは子ども心にも分かった。
しかし、その後の長い低迷期を経て、世界の表舞台に戻ってきた日本女子には、「世界のトップクラス」と名実ともに呼べるだけの選手が育っていた。北京五輪で私はそう思った。あの演技を見ていたら、団体5位にも驚かなかった。採点競技でありながら、過去の実績ではなくちゃんと目の前の演技を評価している体操の審判たちを「えらい!すごい!」と思ったものだ。
あの北京五輪から3年。来年はもうロンドン五輪がやってくる。日本女子の成長は加速したのか、はたまた失速しているのか。興味をもって見てみたが、私の目にはその加速ぶりがまぶしいくらいに映った。
■芸術性の高まりに感嘆 世界の台風の目になる日は近い!?
今大会6連覇がかかっていた鶴見虹子(朝日生命)は、昨年不調に陥っていたようだが、今大会ではすべての種目を大きなミスなくまとめ、貫禄すら感じさせた。ゆかではトレードマークだった「ムーンサルト」をはずすなど、やや「まとめること」を優先した面もあったようだが、十分に復調をアピールできた大会ではなかったか。
鶴見選手の演技はクールな印象で、若干華やかさには欠けるようにも思うが、その分、正確性が素晴らしい。なによりも、ゆかの助走のときさえほとんど緩まない足先の美しさはずば抜けている。体操競技では、足先の美しさは、それほど大きく評価にはかかわらないのかもしれないが、新体操を見慣れた目にも鶴見選手の足先は美しく見えた。
北京五輪以前から、海外の選手に比べると日本選手の足先は美しいと感じていたが、今大会を見てその思いを強くした。鶴見選手だけでなく、今大会2位の田中理恵(日体大院)、3位の新竹優子(羽衣国際大)の足先も美しかった。さらに、この2人は大人の表現力を見せることができる選手たちだ。短い演技時間にたくさんの難度がつまった体操競技では「表現」の入り込む余地はあまりない。しかし、だからこそハッとさせるような表現を見せる選手は魅力的に映り、成績以上に強烈な印象を残し、人々の記憶に残る。
10年世界選手権(オランダ・ロッテルダム)でエレガンス賞を受賞した田中選手もまさにそうだったのだろう。今の田中選手は、遠くから見ても「あれだ」とわかるほどのオーラを放っている。「より美しく、なにかを表現しよう」という思いが外に向けてあふれているのだ。動きから、そして顔の表情からも。新竹選手も、憂いを含んだような雰囲気がオリエンタルビューティーという感じでとてもいい。トップ3選手がそろってこれだけ「美しい」というのは、日本女子の飛躍ぶりがうかがえる。
さらに、その下にもいい選手が目白(めじろ)押しだ。実力もさることながら、かつての体操選手のイメージをくつがえすような「線の美しい選手」がどんどん育っている。6位・飯塚友海(朝日生命)、10位・内山由綺(スマイル体操クラブ)、11位・今西裕万(羽衣国際大)あたりの日本人離れしたスタイルには驚くばかりだ。それでいて、しっかり難度もできるのだから、素晴らしい。伴奏音楽を得たゆかでは、山岸舞(羽衣国際大)、笹田夏実(大泉スワロー体育クラブ)らが見事に音を生かした表現を見せた。総合17位と振るわなかった谷口佳乃(戸田市スポーツセンター)もモダンバレエのような斬新な表現が印象的だった。
難度でも世界と同じ土俵に上がりつつある日本女子。それに加えて、この「美しさ」や「表現力」では海外の選手をも凌駕(りょうが)できるのではないかという期待が膨らんできた。東京での世界選手権、さらにはロンドン五輪。女子では日本が台風の目になる可能性は十分にある。
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