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選手を鼓舞するオージーの応援
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女子200メートル平泳ぎ決勝で7位に終わりぼうぜんとする田中雅美=国際水泳センター(共同)
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「シドニー五輪に来たからには、コレを観なければ始まらない!」
競泳会場に行って、しみじみそう思った。
21日までに日本選手が金メダル4個を獲得した柔道会場の盛り上がりもなかなかだが、地元オーストラリア勢が活躍する競泳には到底かなわない。1万7500人収容のアクアティックセンターは、階段状の観客席の最上段まで“満員御礼”状態で、クーラーが入っているにもかかわらず、会場には熱気が充満している。この競技に賭ける地元の期待のほどが、その場にいるだけでひしひしと伝わってくる。
だからといって、応援のノリは日本でよく見られるような悲壮感に満ちたものではなく、いたって陽気。「オジ、オジ、オジー!」という応援のかけ声が始まると、オージーではない私までもがつられて「オイ、オイ、オイ!」と答えたくなってくる。地元選手がデッドヒートを繰り広げていると、すぐさま立ち上がって大声援。その興奮にこちらまで巻き込まれ、「GO! スージー、GO!」などと叫んでしまいそうになる。こんな雰囲気がサポートしているからこそ、選手たちは実力通りの結果を出せるのかもしれない。
実力通りと言えば、21日は期待の女子200メートル背泳ぎの予選と準決勝が行われた。200メートル個人メドレーで思わぬ惨敗(8位)を喫し、ショックを隠しきれなかった萩原智子だが、この日はいい泳ぎだった。前半から積極的に飛ばし、全体で2位のタイム(2分11秒02)。中尾美樹も5位に入り(2分12秒49)、2人そろっての決勝進出となった。
最後まで実力を出せずじまいだったのが、女子200メートル平泳ぎでメダルの期待がかかっていた田中雅美。20日の予選と準決勝もふるわなかったが、21日の決勝でも本来の泳ぎを取り戻せず7位。自己ベスト(2分24秒12)には2秒以上も遅かった(2分26秒98)。
シドニー五輪直前の8月、田中が籍を置く中央大学水泳部の吉村豊監督に取材する機会があった。疲労物質の乳酸データを使ったトレーニングをいち早く取り入れたのが吉村監督で、その効果とこれまでの実績について話を聞きに行ったのだった。
そのとき、吉村監督がサンプルとしてパソコンを使って見せてくれたのが、田中の乳酸データ。シドニー五輪の代表選考会だった今年4月の日本選手権に向けて、昨年11月から本格的トレーニングに入った彼女のデータは、これ以上ないぐらい理想的な曲線を描いていた。同じスピードで泳いでいても、1ヶ月トレーニングを積むごとに乳酸がたまりにくい身体になっていく(=持久力が増している)。その一方で、乳酸がたまった状態でもスピードが落ちることなく動ける“耐乳酸性(=ラストスパートの力)”も高まっていることが、グラフを見れば私にも一目瞭然だった。
この値がピークに達していた時期に迎えた日本選手権で、田中はヘインズ(南アフリカ)の世界記録まで、あと0秒48に迫る2分24秒12の日本新記録を出した。出場した3種目7レースすべてで日本記録を上回った。もちろん、乳酸データがすべてだとは思わない。だが、この数値が彼女の好調ぶりを示していたことは確かだ。
この取材の際、吉村監督は4月にドンピシャのピークが来すぎたことの心配を、チラリと口にしていた。水泳には素人の私から見れば、「準備期間は5ヶ月もあったのだから、本番に向けてもう一度ピークはつくれるだろう」と思ったが、トップアスリートの身体と心はそう単純ではなかった。彼女の泳ぎを見ていて、つくづくピークのつくり方の難しさを実感した。
鍛え抜かれた肉体に比べ、常に不安と格闘している選手の心は繊細で壊れやすい。人の気持ちを乗せるオージーのような応援があったなら、彼女の泳ぎはもう少し違うものになっていたのだろうか。
■田中雅美/Masami Tanaka 1979年1月5日生まれ、21歳。北海道出身。母や姉が水泳をしていた影響で水泳を始める。15歳のときに94年日本選手権平泳ぎ100メートル、200メートルで初優勝。96年アトランタ五輪では平泳ぎ200メートルで5位に入賞する。その後、99年世界短水路選手権50メートル、100メートル、200メートルの3部門で優勝。シドニー五輪代表選手選考会となる2000年日本選手権では、100メートル、200メートル平泳ぎ2種目の予選、準決勝、決勝、さらに50メートル平泳ぎタイム決勝と、7レースすべてにおいて日本新記録を更新。シドニー五輪代表の女子キャプテンを務める。中央大学4年、JSS所属。165センチ、58キロ
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