逆転の発想で行う“アクティブレスト”とは
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スポーツ界では、各自が思い思いに休むのではなく集合して行うアクティブレストが台頭している【 Photo by Toshiharu Yamamoto 】
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日々の練習や激しい試合の後に、いかに身体に疲労を残さないかが、ケガを予防し、その後の競技活動を低下させない重要な鍵になります。近年、その課題に有効な手段として「アクティブレスト」が重視されています。アクティブレスト(Active Rest)とは、欧米ではスポーツトレーニングの専門用語として使われるとともに、文字通りアクティブに活動しながら心身のリフレッシュを図るという意味合いです。日本語では普通、「積極的休養」と訳されます。意味としては、疲労回復には完全休養よりもあえて身体を積極的に動かし、能動的に疲労回復の働きかけをして休養を取るということです。疲れていればいるほど身体を動かしたくない、完全休息の方が楽だ……そう考えがちですが、アクティブレストでは、まったく逆の発想をします。その方が明らかに疲労回復が早く、スポーツ選手にとってメリットが大きいのです。
■典型的な例は“クーリングダウン”
典型例は試合後もしくは練習後のクーリングダウンです。一般的な傾向として、運動する前のウォーミングアップ(Warming Up:準備体操)は入念に行うけれども、クーリングダウンはおろそかになりがちです。しかしこれをしっかりやるかやらないかで、翌日以降のコンディションが大きく違ってきます。たとえばマラソンレース後にランナーたちは、ゴール後へたりこむのではなく、クーリングダウンとしていろいろなものを実践しています。まずはゆっくりペースでジョギングして、その後、酷使した筋肉をアイシングしたりストレッチングしたり。これら一連の行為は、効果的なアクティブレストとして位置づけられます。
クーリングダウンとして、どのような運動を行うのが最も効果的なのでしょうか。スポーツ種目を問わず、軽いジョギングや体操はかなり以前から行われていました。それにストレッチングが加わったのが1980年代から。それほど選択肢があるわけではありませんが、運動後の疲労回復手段としては「主運動と同じ運動を軽めに」という考え方が一般的です。激しく使った筋肉を、行った運動と同じような形態で軽い強度で動かし(軽めのキャッチボールやジョギングなど)、その後に疲労回復効果の高いストレッチングやマッサージ、あるいはアイシングを行うという方法が効果的です。
■トーナメント戦の試合間にも有効
スポーツの大会では、1日に何試合も戦うことが少なくありません。特に陸上競技、水泳といった記録を競う個人競技や、1対1で戦う格闘技などでは、1日のうちに予選から決勝までを勝ち進んでいくトーナメント形式がよく見られます。選手側にしてみれば、試合数が多ければ多いほど疲れます。勝ち進んだ段階では相手も同じ程度の試合数を経てきているのですから、条件としては同じですが、少しでも優位に立つためには、できるだけ疲労を残しておきたくない。前の試合の疲労を引きずらずに、可能な限りフレッシュな状態で次の試合に臨みたいものです。そこで、アクティブレストです。試合間というスポーツならではの特殊な時間帯に、いかにアクティブレストを有効活用するかが勝敗を左右することにもなります。
■変わりつつある“試合翌日の過ごし方”
スポーツ界で最もアクティブレストが注目される場面といえば、「試合翌日」でしょう。従来のスポーツ界では、試合翌日はチームの拘束を解いて完全休養とするのが常識でした。休日を与えられた選手は、遊びに出かけるなり部屋でゴロゴロするなり、思い思いの過ごし方をしてリフレッシュを図り、再び練習に集合するというパターンです。ところが最近、少し様子が変わっています。アクティブレストの台頭です。試合翌日は完全休養でなく、あえて集合してアクティブレストをする。スポーツ種目を問わず、そんな過ごし方をするチームが増えてきました。そうした方が疲労回復の効率が良く、次の試合をより良いコンディションで迎えられるからです。長期的なコンディショニングとしても、疲労の蓄積を軽減することができ、シーズンを通して良好なコンディションを維持することができます。実際に採用してみると、選手たちも実感として、「疲れが取れる」ことが分かるまでにそれほど時間がかからない。アクティブレストは比較的、即効性もあります。
<この項、了>
山本利春/Toshiharu Yamamoto 1961年静岡県西伊豆生まれ。国際武道大学体育学部スポーツトレーナー学科及び同大学大学院教授(コンディショニング科学)。医学博士、日本体育協会公認アスレティックトレーナーマスター、NSCA−CSCS。特にスポーツ傷害の予防やリコンディショニングなど、スポーツ現場に役立つ実践的な研究を行なうかたわら、トレーナーの指導・育成に力を注いでいる。主な著書に『知的アスリートのためのスポーツコンディショニング』(山海堂)、『スポーツアイシング』(大修館書店)、『測定と評価』(ブックハウスHD)、『疲れたときはからだを動かす』(岩波書店)などがある。
【関連リンク】
・Coaching119 http://www.cc119.jp/ ・SportsClick http://www.sportsclick.jp/ ・日本トレーニング指導者協会 http://www.jati.jp/ ・山本利春文献集(アスレティックトレーナーに関する資料集) http://trainer1985.kir.jp/
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