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“山の神”柏原が圧巻の激走! 東洋大、総合力で往路新記録V
元東洋大監督の川嶋氏が語る箱根駅伝往路総括

2012年1月2日(月)
柏原竜二は5区で区間新記録を樹立し、4年連続の区間賞。東洋大を往路4連覇に導いた
柏原竜二は5区で区間新記録を樹立し、4年連続の区間賞。東洋大を往路4連覇に導いた【写真:北村大樹/アフロスポーツ】

 第88回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の往路が2日、東京・大手町の読売新聞社旧東京本社前から箱根・芦ノ湖までの108.0キロで行われ、東洋大が5時間24分45秒で往路4連覇を果たした。5分07秒差の2位に早大、さらに、14秒遅れの3位に明大が入った。  
 東洋大は、前回大会で同校が樹立した往路記録を大幅に更新した。

 東洋大は1区で4位と好スタートを切ると、2区で設楽啓太(2年)が猛追してトップに浮上。そのまま首位をキープして、5区の柏原竜二(4年)につなぐと、柏原は快走を見せて1時間16分39秒の区間新記録を達成。往路優勝の後押しをした。 
 一方、2連覇を目指す早大は、1区で大迫傑(2年)がレースを引っ張ってトップに立ったものの、その後順位を落とし2位で復路に望みをつなげた。

 スポーツナビでは元東洋大の監督である川嶋伸次氏に、往路の総括とともに、復路の展望について聞いた。

■東洋大、好条件で往路記録を更新

 東洋大は、前回大会、同校がマークした往路記録5時間29分51秒を5分06秒塗り替えての優勝となりました。気温などの条件がよかったのもありますが、酒井俊幸監督が計算していた以上の走りができた選手が多くいた結果だと思います。つまり総合力で他校に勝っていたということでしょう。

 特に、前回大会、1区で早大の大迫に、2位以下が1分近い大きな差をつけられてしまいましたが、今大会では20〜30秒程度とそこまでの差がつかなかった。さらに、大迫が一気にペースを上げることを予測していましたから、各チームがそれなりの戦力を配置していました。5キロ付近で大迫がペースを上げて離されましたが、東洋大の宇野博之(4年)や駒大の撹上宏光(3年)らは、けん制することなく追いかけました。

 さらに、2区でトップを走っていた早大の平賀翔太(3年)が思いのほか伸びなかった結果、東洋大の設楽啓が首位に立つことができました。そして、4区に起用されたルーキー・田口雅也は区間賞を獲得。最初からいい流れで来ていたので、無理をせず前半は抑えて走るような指示が出ていたと思います。
 
 そして5区、さすが柏原ですね。史上8人目の4年連続区間賞、そして自ら持つ区間記録を29秒上回る1時間16分39秒という大記録を樹立しました。全日本大学駅伝(11月・愛知〜三重)の快走を見て、スタミナも十分あるようでしたし、箱根駅伝は4年間の集大成ということもあって好記録が出ると思っていました。

 今大会では過去3大会と異なり、トップでたすきを受け取ったので、「追いかける立場ではないから」と心配する声も上がりました。ですが、それはまったく関係ないと思っていました。というのは、柏原という選手に関していうと、4年間箱根の山上りを経験してきて、『どういう走りをすれば好記録が出るか』ということが体の中に染み込んでいるんですね。タイムを気にせず、自分の感覚だけであれだけ走れたのには、とにかく圧巻の走りだったという言葉に尽きますね。

■早大ルーキー山本、攻めの走りが評価

 5区で明大とのデッドヒートを見せ、往路2位に入った早大は、全体的に精彩を欠いているという印象でしたね。まず、1区の大迫が終わった時点で、2位以下とそこまでの差がつかなかったことは大誤算だったと思います。故障上がりの選手が多かったので、みんな後半になってからの伸びがなかった。3区の矢沢曜(4年)も、普段ならば後半一気に行くのに、いつもと感じが違いましたしね。

 一方、5区の山本修平(1年)は、注目の走りを見せました。レース序盤は、元気がないのかな、緊張しているのかなと思わせましたが、後半ガラッと印象が変わった。攻め続ける走りがよかったですね。とはいえ、全体で考えると、早大や駒大は4区までのところで、2分の貯金を作っていなければならなかった。なぜなら、5区の山上りには柏原がいて、タイムを詰めることができないのですから。ですから、各チームは、そのタイムを最小限に抑えられるように設定した目標タイムにあわせて走るしかないですからね。

■明大の3位は、エース不在で士気が上がった結果

 明大は、補欠に入っているエースの鎧坂哲哉(4年)が、往路出場を回避しました。それまでエース頼みだったチームも、こうした故障があったときには、チーム全体が頑張ろうと、士気が上がる傾向にあります。ですから、1区のルーキー、大六野秀畝が1時間2分46秒で区間6位、2区でも菊地賢人(3年)が1時間8分47秒で区間6位といい流れを作ることができました。3区で区間13位ではありましたが、4区で1年生の八木沢元樹が8位で受け取ったたすきを、区間2位の走りで3位に押し上げました。さらに山上りでは、前回大会で5区区間2位だった大江啓貴(3年)は、今大会でも1時間19分34秒の区間2位と、気持ちが前面に出た粘り強い走りを見せました。

 そして、青山学院大の出岐雄大(3年)もいい走りを見せていましたね。とにかく非常に安定していて、2区で同大箱根駅伝史上初の区間賞を獲得しました。エースが集う区間で、堂々とした走りを見せましたね。

 トップの東洋大と、2位以下との差が5分以上ありますから、追うチームは少しずつその差を詰めていくしかない。そうなると、有力と思われていた早大(往路2位)も駒大(同4位)も総合優勝は現段階では厳しいでしょうね。
 しかし、番狂わせが起きるのが箱根駅伝です。復路の流れもありますし、展開が分からない部分はありますが、戦力的に考えて優勝の可能性を残しているのは、実力のある選手が残っている駒大、その次に早大、そして明大という順でしょう。

 そして駒大は、前回大会6区で区間新記録を達成した千葉健太(3年)が同区間にエントリーされています。千葉は故障上がりで不安な要素が残りますが、ここで巻き返しを図れば優勝の光が見えてくるかもしれませんね。

<了>

■川嶋伸次 / Kawashima Shinji
1966年、東京都出身。日体大時代、箱根駅伝では山下りの6区を担当し区間賞を取るなどチームに貢献。卒業後は旭化成陸上部に入部し、各大会で活躍した。2000年の琵琶湖毎日マラソンで自己ベストとなる2時間9分04秒をマーク(日本人トップの2位)、シドニー五輪マラソン代表に選出された。その翌年に現役を引退、02年からは東洋大陸上競技部の監督に就任するが、08年12月、陸上部員の不祥事により引責辞任する。現在は旭化成陸上部コーチを務める傍ら、「リスタートランニングクラブ」のアドバイザーや各種講演会、マラソンのゲストランナーとして活躍している。09年8月には自叙伝『監督―挫折と栄光の箱根駅伝』(バジリコ刊)を出版。

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東洋大が、2年ぶり3回目の総合優勝を飾った。写真はゴールテープを切るアンカー斉藤貴志【写真:築田純/アフロスポーツ】

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