東洋大、連覇を引き寄せた3つのポイント=箱根駅伝・総括
1月2、3日に行われた第86回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、東洋大が2連覇を達成し、幕を閉じた。5区で驚異的な区間新記録をたたき出し、東洋大優勝への道筋を付けた柏原竜二(2年)のインパクトがあまりにも大きかったが、それ以外にもレースを左右する要素はあった。そのポイントを振り返りながら、今大会を総括してみたい。
■ポイント1:日大、山梨学院大は3区までにもたついた
今大会の最初のポイントは3区までの序盤である。過去2大会、1区はスローな展開でレースが進み、15キロを過ぎてからのスパート合戦で2区へ中継することが多かった。参考までに、前回大会の1区、先頭が10キロを通過したタイムは31分32秒(非公式、以下同)、前々回は31分16秒。しかし、今大会は29分7秒とハイペースで通過。この時点で先頭集団はすでに9校に絞られていた。その展開に付いていけないチームは一気に差を付けられることになった。優勝候補の一角に名を挙げられていた駒大はこの1区での起用を想定していた星創太(4年)、上野渉(1年)をともに欠いたことで出遅れた。
「序盤、テンポが上がった時に対応できなかった。1区では1分から1分30秒の差は覚悟していたが、トップと2分47秒差まで広げられたのは、大きな痛手だった」(駒大、大八木弘明監督)
この区間、東洋大はチームトップのスピードランナー、宇野博之(2年)が担当。区間順位は5位だったがトップと大きく離されることなく、2区へつないでいる。
そして各校のエースが集う2区。日大のギタウ・ダニエル(4年)が一気に抜け出すことはどのチームも想定していたことだろう。しかし1区で13位と出遅れた日大はこの区間で2位止まりとトップに上がることができなかった。同様に山梨学院大も3区、オンディバ・コスマス(2年)が走り終えた時点で2位。上位をうかがう2校は序盤でもたついた感がある。
一方、10位以内を目標としていた青山学院大は、この区間までに主力を投入し、8位でしのいだ。そしてその勢いのままに往路を9位で折り返した。「1区の出岐雄大(1年・区間9位)がいい流れを作ってくれた。往路は100点の出来です」(青山学院大、原晋監督)
東洋大はというと、3区を終えた時点で、トップ明大と3分9秒差の9位、さらに、5区の柏原にたすきが渡るときには、その差は4分26秒にまで広がった。しかし、この差は東洋大にしてみれば、許容の範囲内。なぜならば前回大会、5区の柏原はトップ早大と4分58秒差を逆転していたからだ。
■ポイント2:勝負を決めた山
今大会の目玉、柏原は期待以上の走りだった。その快走ぶりは各メディアで取り上げられている通りだ。ほかにも上位に食い込んだチームは軒並み、山区間の5区、6区をうまく走った。東洋大は6区の市川孝徳(1年)が後続に差を詰められながらも、余裕のある差(2位山梨学院大に2分50秒差)を保ったまま7区につなげたことが大きい。
対照的に早大は5区で八木勇樹(2年)が区間9位、そして6区で加藤創大(4年)が区間16位となり9位まで順位を落とす。「山の差で勝負が分かれた。一から出直しです」とは早大、渡辺康幸駅伝監督の弁である。
また4区までトップを維持した明大もこの5区で区間18位、6位にまで順位を落とした。「往路優勝は考えていなかった」と西弘美監督は振り返るが、ここで流れを失ってしまった感は否めない。
■ポイント3:12番手まで充実している東洋大
東洋大はここからも盤石だった。
7区の田中貴章(2年)、8区の千葉優(3年)は独走になっても、走りが崩れることはなかった。「前半は抑え目に入り、後半にペースアップするように」という酒井俊幸監督の指示を守り、田中が区間賞、千葉も区間2位の走りで、後続を引き離すことに成功する。
「単独走は練習でもやっているから不安はなかった」と酒井監督が言う通り、唯一不安のあった復路のエース区間9区を前に2位との差は5分25秒。もう後ろを振り返る必要のないだけの差を付けた。
2位以下はすべてのポイントでそつなくこなした山梨学院大が3位、中大が4位に入った。復路で驚異的な追い上げを見せた駒大は2位にまで順位を上げるも、最後まで序盤の出遅れが響いた格好となった。
柏原の作る貯金があるからこそ、ほかの区間の選手もゆとりを持って走れたことは間違いない。しかし「1番手から12番手まで大きな力の差がない。特に8番手から12番手の選手の層が厚かった」(酒井監督)という選手層の厚さも見逃してはならない。
次回大会はこの優勝メンバー8人が残る。6区山下りで及第点の走りを見せた市川はまだ1年生だ。
この東洋大に来年、立ち向かえるのは果たしてどのチームだろうか。今のところライバルは簡単に現れそうもない。
<了>
加藤康博1976年11月14日埼玉県出身。中央大学法学部政治学科卒業。スポーツライター、ノンフィクションライター。サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールといった“フットボール全般”の取材をライフワークとし、併せて国内外の陸上競技をカバーしている。近著『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)が好評発売中。 |

