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鈴木栄一 スポーツナビ

「バスケがしたい」 bjリーグトライアウトの意義とは

2005年02月14日

356人が参加して行われたbjリーグの関東地区トライアウト
356人が参加して行われたbjリーグの関東地区トライアウト【 スポーツナビ / 写真提供:bjリーグ 】


■河内コミッショナー 「光るものを持っている選手がいた」

 日本初の男子プロバスケットボールリーグとして11月の開幕を目指すbjリーグの1次トライアウトが、関東地区は12日に神奈川県小田原市で、関西地区は13日に大阪府河南町で実施された。

 筆者が取材した関東会場の小田原市総合文化体育館では、なんと356名がトライアウトに挑戦。午前中は、ボードタッチ、パス&シュート&ドリブル、1対1、シャトルランなど、基礎体力、技術を重視したテストが行われ、まず120名に絞り込まれた。午後にはハーフコート、フルコートでの5対5など実戦形式の選考でさらに62名まで減り、フルコートでの5対5を実施。今回のトライアウトでは関東会場、関西会場合わせて50名を選抜し、5月の2次トライアウトに招待。そして、その後にドラフトが行われる。

 河内敏光コミッショナーは、「正直不安があったが、こんなにもたくさんの『バスケがしたい』(bjリーグのスローガン)選手たちが来てくれた。自分たちが間違っていないと確信できた」とコメント。トライアウト受験者については、「前から知っている選手たちの実力は予想どおり。また光るものを持っている無名選手も何人か目に付いた。今回の合格者から、少なくとも数名は開幕メンバーに入ってくるのではないか」と評価したが、「全体的にはもっと自分をアピールしてほしかった。基礎をきちんと教えてもらっている選手が少なかったという印象を受けた」と厳しい意見も残した。



■bjリーグはどのように生まれたのか?

 bjリーグについて簡単に触れると、日本リーグ機構(JBL)からの脱退を表明している新潟アルビレックス、埼玉ブロンコスの2チームに加え、仙台89ers、東京アパッチ、大阪ディノニクス、大分ヒートデビルズが参加し、計6チームでスタートする。コミッショナーには元日本代表監督で新潟アルビレックスのGMを務めていた河内氏が就任している。

 bjリーグは、地域密着をモットーに一つのチームを複数の地元企業が出資して支える運営形態を目指しており、米4大リーグのNBAやNFLを参考に、各試合のチケット販売以外のテレビ放映権、グッズ販売、リーグとのスポンサー契約などによって得た収入を各チーム平等に分配する。また、サラリーキャップ制やドラフト完全ウエーバーを導入することで各チームの戦力均衡化を図り、リーグの活性化を目指していくという。

 新潟、埼玉がJBLを脱退し、袂を分かつ格好でbjリーグを発足させた理由は、現在のJBLでは各チームが利益を上げにくいシステムになっているからだ。JBLは各チームからの会費と都道府県協会に売るゲーム開催権、テレビ放映権料などで運営されているが、ここで問題なのは各チームにチケット収入がないことだ。

 JBLの各試合は、試合を開催したい各都道府県協会が開催権をリーグから買い、チケットを地元で売りさばくシステムになっている。そのため、チケット収入を得たい新潟は、ホームゲームを開催するために新潟県協会から、開催権を買っている。企業チームと違い、独立採算制をとっているクラブチームの新潟や埼玉にとっては、かなり厳しいリーグ運営システムなのだ。そのため新潟側は、2002年からプロ化推進プロジェクトを設立し、日本バスケットボール協会(JABBA)直轄のJBL側にプロ化を訴えてきた。だが、JBL側にプロ化への動きは見られなかったため、自らが先頭に立って新リーグのbjリーグを立ち上げた。JBLは新潟、埼玉が脱退してbjリーグ設立を発表した後になって、ようやく「プロ化実行検討委員会」を立ち上げたが、両チームにとっては遅過ぎる行動であった。



■波多野ら有力選手も参加 「もっと上を目指したい」

 さて、11月開幕に向けて動き出しているbjリーグだが、まだリーグの実体はあまり見えてこない。その大きな要因として挙げられるのが、各チームの選手がいまだに決まっていないことだ。だからこそ、今回のトライアウトにどんな選手たちが参加するのか興味があった。

 関東会場には、昨年の全日本学生選手権(インカレ)準優勝の専大からF波多野和也、3位の日大からPG日下光、SG蒲谷正之、F城間修平が参加していた。波多野と日下はインカレで優秀選手賞にも輝いている選手。波多野は参加の理由について、「バスケットボールをやっている以上はプロになりたい。実業団は考えていなかった。プロはバスケットボールだけに集中できることが魅力。最終目標はNBAだが、その過程の一つとして(bjリーグは)よい機会。これを機にもっと上を目指していきたい」とコメント。日下は、地元・仙台で教職に就くことが決まっていたが、「bjリーグが始まるということで、挑戦してみようと思った。(bjリーグによって)バスケットボールをすることの幅が広がったのは良いことだと思う。もっとバスケットボールの面白さを知ってもらえると思う」と語ってくれた。

 今回のトライアウトでは、日下が「基礎体力が大事だと分かった」と言うように、スタミナ面が要求されていた。午後の最終選考では、インターバルはあるがフルコートの5対5を繰り返し行うなど、体力的にかなりきつい内容だった。また、オープントライアウトであるため仕方ない面もあるが、受験者のレベルに大きなバラつきがあった。



■2次トライアウトではもっとアピールを

 河内コミッショナーが「もっとアピールしてほしかった」と述べていたが、著者も同感で、全体的に良くも悪くも周囲の目を引くようなパフォーマンスを見せる選手はほとんどいなかった。しかし、人数が絞られた午後の選考では、即席チームを組んで行われたものであり、その中で個性を発揮するのは難しいだろう。また、今まで日本バスケットボール界では数百人規模の大々的なトライアウトなど皆無であり、各選手ともトライアウト慣れしていない印象を強く受けた。

 2次トライアウトは、1次の合格者に、新潟や埼玉でプレーしている選手、さらにほかのJBLチームから挑戦する選手たちが参加する見込み。その参加メンバーが明らかにならない限り、bjリーグの全体像はなかなか見えてこないが、一つ断言できるのは、今回のトライアウトはbjリーグだけでなく、日本バスケットボール界においても大きな意義があったということ。JBLのチーム数はバブル崩壊後減るばかり。大学卒業後もトップレベルでバスケットボールを続けることのできる選手は、わずか10人程度だ。

 球技では、野球やサッカーに次ぐ競技人口を有するバスケットボールだが、トップレベルに挑戦できる選手の枠はあまりに狭い。バスケットボールは30歳を過ぎても一線で活躍する選手が多いように、大卒後23、24歳はまだまだ成長期。本場アメリカでも、大卒後に大化けする選手は少なくない。bjリーグの誕生により、今までなら埋もれていた才能が開花する場を得たのは、大きなプラスだ。河内コミッショナーは「無名だが光るものを持っている選手はいた」と語った。2次トライアウトに何人のダイヤの原石が参加するのか注目したい。



■1次トライアウトに参加した注目選手

波多野和也(専大) 192センチ、85キロ
インカレ準優勝の専大では、リバウンドの要として活躍。また、攻撃面では精度の高いミドルシュートを持っている。

日下光(日大) 175センチ、68キロ
名門日大の司令塔としてチームをインカレ3位に導いた。リーダーシップがあり、安定したゲームメーキング能力を誇る。

城間修平(日大) 189センチ、88キロ
バスケットボールIQが高く、堅実なプレーを見せる。攻守ともにすきがないオールラウンダーで、特に粘り強いディフェンスに定評がある。

蒲谷正之(日大) 182センチ、78キロ
3ポイントシューターが武器のピュアシューター。インカレ3位決定戦の拓殖大戦では、持ち味を発揮し、3ポイントを7本中5本成功させ勝利(81対78)に大きく貢献した。

青木康平(03年専大卒、Far East Ballers) 168センチ、75キロ
02年のインカレでは専大優勝の立役者となり、MVPを獲得した。大学卒業後、ストリートボーラー集団のFar East Ballersに所属していた。

(取材・文/鈴木栄一)



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