勢いなら楽天も…ソフトバンクに追い風!?
プロ野球解説者・阿波野秀幸氏がパ・リーグCS第1Sを分析
創設5年目にして初のAクラス入りを果たした東北楽天と昨年の6位から2年ぶりCS進出となった福岡ソフトバンクが対戦する日本シリーズ進出をかけたパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)第1ステージが16日から開幕する。ことしの両チームの対戦成績は東北楽天が13勝、福岡ソフトバンクは11勝とほぼ互角。3戦2勝制の短期決戦を制して、北海道日本ハムの待つ第2ステージに進出するのはどちらか? プロ野球解説者の阿波野秀幸氏にパ・リーグCS第1ステージの見どころを聞いた。
――まずはCS第1ステージで対戦する東北楽天と福岡ソフトバンクのそれぞれの特徴は?
ことしの東北楽天は投手力中心のチームでした。ただ、中村紀洋ら補強がうまくいかなかったり、ケガ人も多く出たんですが、首位打者を獲得した鉄平や草野大輔が1年間を通して打線を支えました。39本塁打の山崎武司も波はあったんですけど、昨年チームが失速した7、8月の時期にことしはしっかりと打つことができました。また、7月下旬の球宴以降はピッチャーでは福盛和男、バッターではリンデンの2人が加わって、チームの勢いが加速しました。
福岡ソフトバンクはリリーフの3投手“SBM”(攝津正、ファルケンボーグ、馬原孝浩)が1年間安定していて、勝ちパターンをつくることができました。この3人までに投手陣をどうつないでいくか、という戦い方だったと思います。また、先発陣では杉内俊哉は1年間しっかりと投げてくれましたし、ホールトンもよくやりましたが、2人に続くピッチャーがいませんでしたね。打線では3割1分4厘を打った長谷川勇也の存在が大きかった。あとは本多雄一、川崎宗則の1、2番コンビ、小久保裕紀、松中信彦、多村仁志ら3人の主砲と顔触れが変わらなかったんですが、交流戦ごろに加入したオーティズがチームを生き返らせました。
――9・10月の成績は東北楽天が21勝14敗、福岡ソフトバンクは13勝16敗。勢いを考えると東北楽天がやや有利な気もします
ことしの対戦成績はほぼ互角なので、一概にどちらが有利とは言えないです。ただ、CS第1ステージは3戦2勝制の短期決戦で先発が3枚でいいことを考えると、福岡ソフトバンクに強い岩隈久志、田中将大、永井怜の3投手を先発に持っていることや、仙台で試合ができることは東北楽天にやや有利かな、と見てました。しかし直前になって、野村克也監督の退任問題やリンデンの登録抹消など雰囲気が変わるような話が出てきてしまいました。リンデンの登録抹消についてはプロとしてやっているわけだから東北楽天メンバーも何とか切り替えることができると思います。中島俊哉や中村真人らが出場機会の増えるチャンスだと思って活躍してくれれば、リンデン不在も割り切って戦えるでしょう。ただ、監督問題はややこしいですね。気にしないようにすることもエネルギーを使いますし、新聞やグラウンドを取り囲むメディアの雰囲気などで様子が入ってきてしまうので、どうしても集中力が削がれてしまいます。東北楽天のような若いチームには重荷になるような切実な問題ですね。
――監督問題を解決するには何が必要ですか
そういう問題を一掃してくれるのがベテラン山崎武のホームランだと思います。両チームとも先発がいいだけに、打ち合いよりも投手戦が予想されます。大味なゲームにならない。そこで流れを変えるベテランの一発が出るか。山崎武はプレッシャーのかかるタイプではないですし、「野村監督を胴上げしたい」と公言しているほど思い入れがあります。直近の5、6試合で23打数1安打と打てていないので、このCS開幕までの空いている期間にいかに調整できるか。山崎武の活躍が楽天のカギを握ると思います。
――一方、福岡ソフトバンクにとって相性の悪い岩隈、田中、永井の攻略方法はありますか
福岡ソフトバンクに相性のいい3投手はタテに落ちるフォークを持っています。福岡ソフトバンク打線もフォークの精度の良さにどうしてもバットが出てしまい、苦労していました。キーになるのは、1、2番を務める川崎、本多がいかに出塁するか。出塁してプレッシャーをかけて、フォークを使いにくい状況をつくることです。そうなると、ピッチャーもフォークをコントロールしたくなって、腕の振りがゆるむので、バッターにとっても打ちやすくなります。福岡ソフトバンクのクリーンアップには、松中こそ欠場ですが、小久保、多村、オーティズと右方向にも打てる打者が多いので、ピッチャーも投げていて怖さが出てくるはずです。
――第1ステージの見どころは
過去のCS第1ステージでは初戦を取った方がほぼ第2ステージに進出しています。両チームともどうしても初戦を取りたいでしょう。福岡ソフトバンクはCS開幕までの10日間で1試合しか試合をしていないので、試合勘を埋めなきゃいけない。初戦の先発が予想される杉内のピッチングが本当に大事になってくると思います。1戦目で流れをどう手繰り寄せられるのか。また、東北楽天にとっては、杉内をどのように攻略するか。読みのいい山崎武や長打のあるセギノールがしっかりと打てるかでしょう。
あとは1人で投げ切れる杉内に比べて、初戦の岩隈が何イニング投げられるかもポイントになるでしょう。本来ならば、岩隈、田中、永井のローテーションが妥当ですが、岩隈、永井、田中の順番で、初戦は田中をリリーフでベンチ入りさせるという奇襲作戦もあると思います。ことし13勝を挙げた永井を信頼して2戦目に投げさせてもいいと思います。短期決戦ですから状態のいい選手をどんどん使うべきです。
あとは第1ステージの両チームは5割そこそこのチーム。優勝チームに比べて不安材料もある。ミスした方が負けだと思います。福岡ソフトバンクは松中不在は確かに大きいですが、レフトのオーティズを指名打者に回して、明石健志をレフトに回せるので守備の不安が解消できます。また、10月11日のシーズン最終戦で和田毅が東北楽天戦で復活登板したのも大きいです。146キロを計測した威力あるストレートがよみがえっていて、内角をガンガン突いてました。和田は3戦目の登板が予想されますが、東北楽天に「戦いたくないなぁ」というインパクトは強く残ったと思います。
後半戦の勢い、地元・仙台での試合を考えると東北楽天がやや有利かなと思っていましたが、監督問題で本当にチーム力は五分五分になってきたと考えます。初戦の出来が第1ステージを大きく左右するでしょう。
<了>
■阿波野秀幸/Hideyuki AWANO
1964年7月28日生まれ。神奈川県出身。桜丘高−亜大−近鉄−巨人−横浜。178センチ、75キロ。左投げ左打ち。87年に、巨人、大洋と競合の末、近鉄にドラフト1位で入団。先発として1年目から活躍し、15勝を挙げて新人王に輝いた。89年には最多勝と奪三振王を獲得してリーグ優勝に貢献。95年、巨人にトレード。98年には横浜に移籍し、2000年に引退。01年から巨人の投手コーチ、06年から横浜の投手コーチを務めた。07年からは野球解説者として、テレビや新聞などで活躍している。
・“5度目の正直”狙うソフトバンクのキーマンとは!? クライマックスシリーズ直前リポート (2009/10/13)
・東北楽天、球団創設初のCS進出のカギは!? プロ野球解説者・阿波野秀幸氏が分析 (2009/9/18)




