福岡ソフトバンクホークス |
ソフトバンク連続日本一のカギを握る、二人の投手
鷹詞〜たかことば〜
■43勝分の流出
昨季の球界覇者、ソフトバンク。球団史上初の2年連続日本一とリーグ3連覇へ向けたキャンプが今年も宮崎市で行われている。
だが、周囲からは不安の声が聞こえてくる。それも仕方ないだろう。先発ローテーションの、しかも柱を担った投手が3人も抜けたのだから。
和田毅 16勝5敗 防御率1.51
杉内俊哉 8勝7敗 防御率1.94
ホールトン 19勝6敗 防御率2.19
※成績はいずれも昨季のもの
計43勝――昨季チーム88勝だからほぼ半分の勝ち星である。先日、宮崎で毎年訪れるお好み焼屋でたまたま隣の席になった某セ球団のコーチからも「ソフトバンクは大変ですよね〜」と同情されてしまった。
しかし、どうだろう? むしろ楽しみである。キャンプのある日の事だ。「いや〜アイツら、何だかもう風格さえ感じさせるよね」と声を弾ませたのはブルペンでの撮影を終えた球団スタッフ。南海時代から球団に在籍する彼は「山田と岩嵜、アイツら今年はやると思うよ。俺の予想、けっこう当たるんだ」とにやりと笑った。
■ダルビッシュに弟子入りした22歳岩嵜
6年目左腕、23歳の山田大樹と5年目右腕、22歳の岩嵜翔。昨季、山田は17試合に先発して7勝7敗、防御率2.85の成績を残し、日本シリーズ第5戦にも先発して6回3安打無失点で勝利投手になった。岩嵜は13試合に先発して6勝2敗、防御率2.72。5月にプロ初勝利を挙げたばかりだったが、7月にはプロ初完封もマークした。
彼らは対照的な球歴を歩んできた。山田は育成枠でプロ入りし、09年オフには一度自由契約になった。その後育成選手として再契約を果たし翌年の開幕前に支配下登録入りした、いわゆる苦労人である。一方の岩嵜は市立船橋高3年の夏に甲子園に出場し、最速150キロ右腕として注目を集めた。ソフトバンクには07年高校生ドラフト1巡目で入団し、高卒1年目から一軍登板のチャンスが与えられた。入団から3年間はなかなか結果を出せずにもがいていたが、昨年5月13日の西武戦(ヤフードーム)で涙のプロ初勝利を挙げたのである。
年齢も近く、ともに伸び盛りの両腕が互いを意識しないはずがない。岩嵜が「15勝」を目標に掲げれば、当初は「昨季の倍」と言っていた山田もすぐに上方修正した。また、それを果たすべく、オフはそれぞれ今季からメジャーリーガーとなった投手のもとに弟子入りした。山田は和田毅(オリオールズ)、岩嵜はダルビッシュ有(レンジャーズ)と自主トレを行ったのだ。山田は昨年までチームメイトだったので自然な流れだが、岩嵜の場合はなぜ……。
「秋山監督がダルビッシュさんに頼んでくれて、それから和田さんが仲介をしてくれたんです」
2週間に及ぶダルビッシュとの合同トレでは「体を大きくするための方法や考え方を教える、と言われました」。たった2週間で……と思ったが、キャンプインで出会った岩嵜はまるで昨年と別人だった。昨シーズンに比べて体重は10キロ近くも増えた。そのうち8キロが1月だけの増加分だという。
「パワーをつけたい」
昨年7月のプロ初完封は、実は16年ぶりの珍事のオマケがついた。27アウトの中で奪三振は0だった。「恥ずかしかったですよ」と岩嵜は振り返る。やはり理想像は右の本格派投手なのだ。
■23歳山田は和田毅と自主トレ
山田もまた、和田の肉体改造をテーマにした自主トレのおかげで体がかなり大きくなった。昨季は140キロ未満ながら「縦にも横にも動く直球」で凡打の山を築いたのだが、09年には最速151キロをマークしたこともある。しかし――「僕は1年を通して戦い抜くための体力強化がテーマ。あの頃はなぜあのような球を投げられたのか分からないし、体が大きくなったところでピッチングスタイルは変わらないですよ」と苦笑いを浮かべるのだった。
「和田さんや杉内さんの移籍が決まった時は寂しいと思ったけど、今はそんな気持ちはない。僕にとっては大きなチャンスです」(岩嵜)
「チャンスなのは間違いない。年始の番組の企画で書き初めを書いた時、『柱』と書きました(ちなみに書道5段の腕前!)。この機会を逃してはいけない」(山田)
彼らの活躍を楽しみにしているのは、この人も同じである。
「若い選手たちは去年で自信をつけた。主力が抜けたが、チャンスだということでプラス面も出てくるだろう」と話したのは王貞治球団会長だった。
2012年、ソフトバンクは球団史に新たな1ページを刻めるか。無限の可能性を秘めた彼らがそのカギを握る。
<了>
・福岡ソフトバンクホークス・キャンプ情報など (2012/2/20)
・篠塚和典が見た“監督”中畑清とDeNAのキーマン=プロ野球キャンプリポート (2012/2/19)
・ダルビッシュや青木ら主力移籍の影響は?=達川光男氏が語る (2012/1/24)
・中島裕之、ヤンキース入り断念の理由と1年後の可能性 (2012/1/10)
・「名将」秋山監督が見せた、日本一への執念と涙のワケ=鷹詞〜たかことば〜 (2011/11/23)
田尻耕太郎
1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者として活動。2004年8月より独立。現在もホークスを中心に九州のスポーツを取材。また、今年はメジャー取材も。 |

