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コラム  

次世代エース・涌井秀章
ヤングレオの雄叫び 〜新黄金期の序章〜第2回

2006年05月24日 永田遼太郎
松坂に次ぐ“次世代エース”として期待されている涌井
松坂に次ぐ“次世代エース”として期待されている涌井【 AFLO SPORT 】

伊東監督も“ポスト松坂”を期待

 ここ一番で頼ったのは自身がもっとも得意とするストレートだった。
 3月26日、舞台は本拠地インボイスドームのオリックス戦。マウンドには“ポスト松坂”を期待されている19歳の涌井秀章の姿があった。プロ1年目の昨季、勝ち星は交流戦の対ヤクルト戦で挙げた1勝のみ。同一リーグの相手はもとより、本拠地インボイスドームでの白星もゼロに終わった。

 計り知れない悔しさを胸に涌井は昨オフ、自宅から約1時間半以上かかる母校・横浜高まで連日通い、下半身を徹底的にいじめ抜いた。すべては昨年のリベンジを果たすため。伊東勤監督も、その意識の高さを買って、今季開幕2戦目に涌井を抜てき。“次世代エースへ”の期待がありありと見えた。

 オフに行った自主トレの成果は、如実に表れた。
 手元でグンと伸びてくる直球は相手打者をことごとく詰まらせ、凡打の山を築く。もちろん、体力面の向上だけではここまで生きたボールは投げられない。一球ずつに己の想いを込めたそのボールは、相手打線を圧倒し、7回まで8三振を奪う力投。主砲の中村紀洋からは3打席連続三振を奪った。念願だった地元インボイスドームでの白星と同一リーグを相手にしての白星の味は格別だった。
「去年はホームで1勝もできなかったのでうれしいです」
 と満面の笑みを浮かべながら喜んだ。

 これで弾みがついた涌井は、ここから千葉ロッテ、北海道日本ハムに勝って3連勝。その後、一つの負けを挟んだが、4月23日の東北楽天戦では同じ10代の炭谷銀仁朗とのコンビで2安打完封勝ち。これで福岡ソフトバンク以外のパ・リーグ全球団から白星を挙げたことになる。

開幕時の気持ちの強さ足りなく自滅…

 しかし、ここで落とし穴が待っていた。
 5月7日、インボイスドームで行われたソフトバンク戦。初回、先頭の大村直之に右前へ運ばれると、続く川崎宗則に四球を与え、早々にピンチを迎える。さらに松中信彦にも四球を与えると、続くズレータに三塁線へ痛打され2失点。以降も強力打線を誇るソフトバンクを意識しすぎた涌井は失点を積み重ね、パ・リーグ全球団からの白星はひとまずお預けとなった。
「自滅した。ストレートは走っていたのに……。慎重に行き過ぎたと思う」
 足りなかったのは、開幕時に見せていた気持ちの強さだったようだ。
 指揮官もこの日の投球に曇り顔。「投球に若さがない」と切り捨てた。

 さらに交流戦に入って最初の登板となった5月14日の巨人戦でも初回から、相手打線を意識しすぎて自滅。この日は序盤の大量リードをもらっての投球だったが、伊東監督は勝利投手の権利を得る5回を待たずにして涌井をベンチに下げた。
 試合後、涌井は重い表情でグラウンドを後にした。

球界のエースに一歩も引かず投手陣を救った19歳

 そして迎えた5月24日のナゴヤドーム。
 相手マウンドには、ここまで5勝0敗でセ・リーグ防御率トップの川上憲伸がいた。
 10日間のインターバルを開けた涌井は、この期間でしっかりと充電していたようだ。初回、1死満塁のピンチを迎えたが、強い気持ちで打者・アレックスと対峙(たいじ)する。カウント2−3から全神経を指先に注いだ144キロの直球はわずかに高めへ浮いたが、球の勢いにつられるように球審・名幸一明の右手が上がった。
 これで勢いづくと、8回途中まで8三振を奪う力投を見せる。球界を代表するエース・川上憲伸を相手に一歩も引かず渡り合い、見事、今季5勝目を挙げた。

「今日は涌井本来の投球に戻ったね」
 伊東監督も強い気持ちを取り戻した“次世代のエース”を称賛した。
 交流戦に入って一時は、好調ロッテに引き離されかけた西武。この試合まで9試合連続初回失点、交流戦に入ってからのチーム防御率は7.70と混迷を極めた投手陣。それを救ったのが、19歳の涌井だった。再び強い気持ちを取り戻した19歳がV奪回へ、そして新黄金期へのキーマンとなる。

<了>

■永田遼太郎/Ryotaro Nagata

1972年生まれ、茨城県出身。格闘技雑誌編集を経て、2004年からフリーとして活動開始。同時に、学生時代の野球経験を生かし野球ライターとしての活動もスタート。中学生からプロに至るまで幅広い範囲で野球取材を行っている。少年時代からのパ・リーグびいきで、現在は千葉ロッテマリーンズと西武ライオンズを主に取材。『ホームラン』(日本スポーツ出版社)、『スポルティーバ』(集英社)などの雑誌媒体の他、マリーンズオフィシャル携帯サイトやファンクラブ会報誌などにも寄稿している


 
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