コラム
「普段通り」に戦えた巨人が日本一に
プロ野球解説者・大塚光二の日本シリーズ解説
プロ野球日本シリーズ第6戦が7日、札幌ドームで行われ、巨人が2対0と北海道日本ハムを下して、7年ぶり21回目の日本一に輝いた。
スポーツナビでは、日本シリーズの毎試合後にプロ野球解説者・大塚光二氏による特別解説をアップ。現役時代の98年に敢闘選手賞を受賞し、通算打率3割9分7厘と日本シリーズで勝負強さを発揮してきた大塚氏は、日本ハムと巨人の第6戦をどう見たのか?
■試合前の練習で緊張感が足りなかった日本ハム
今日の試合は普段通りの戦いができた巨人と、できなかった日本ハムの差が出ました。ミスが目立った日本ハムなんですが、試合前の練習を取材して緊張感が足りないように感じました。「札幌ドームに帰ってくる」という目標を達成した安堵(あんど)感が大きいのは分かるんですが、リラックスしすぎていましたね。実際にゲームに入ると、負ければ終わりの試合ですから一気に緊張感が高まります。そこで1点を先制されて、どんどんプレッシャーが日本ハムにかかっていきました。
選手に話を聞けば、「緊張していなかった」、「プレッシャーは感じなかった」と言うと思うんですが、シーズン中にあれだけ好球必打でスイングしてくる日本ハムが、今日は見逃し三振が5個もありました。振っていくチームなのに、それができなかったのはプレッシャーのせいだと言えるでしょう。
試合を振り返ると日本ハムにとっては1回の攻撃で得点できなかったことが痛かったです。まず無死一塁で森本が送りバントを失敗。シーズン中では考えられないミスでした。そして4番・高橋の打球を受けた巨人・東野が負傷交代して内海がマウンドに上がった場面。2死一、二塁で緊急登板した内海に対してスレッジが初球のカーブを打って凡退してしまいます。ここは絶対に初球は見るべきでした。プレッシャーは内海にかかっていましたから。スレッジが得意なストレートを待っていて、甘いストレートを打ちにいくのなら分かるんですが、難しい変化球には手を出すべきではありませんでした。
今日は王手がかかっていて、どちらに流れが転んでもおかしくない試合。その中で1回の攻撃で2つのミスが出て、6回には稲葉に守備のミスがありました。日本ハムは簡単なミスをしないで勝ってきたチームなので、普段のシーズン中に起きないミスがこれだけ出たのは痛かったですね。
■巨人を救った内海の好投と松本の好守
一方、巨人としては内海の好投が大きかったです。内海は、先発の東野が早い回に打ち込まれたら2番手として投げる準備をしていたと思うんですが、思わぬアクシデントで登板になりました。ここで失点していれば、日本ハムが勢いに乗っていた可能性が高いので、内海の役割は非常に大きかったです。緊急事態ですからベテランの豊田に1回を任せて、2回から内海の方が安全だと思って見ていたんですが、プレッシャーの中で良く投げましたね。
また、その内海を助けたのが2回の松本のファインプレーでした。2死一塁で二岡のセンターへの強烈なライナーを、ダイビングキャッチで抑えました。外野手にとっては自分の正面への低いライナーに飛び込むのは、目測を誤る可能性がありますから非常に難しいことです。そして、キャッチに失敗したら三塁打やランニングホームランになってしまいますから、多くの場合はダイビングキャッチは自重すべきプレーなのです。
ただ、松本は170センチと小柄で自分の正面への低いライナーに対して目線がブレませんでした。だからこそ打球の目測を誤らなかったことが良かった点のひとつです。また、大柄な選手だと低めのライナーに対してグラブを下から出す必要があるんですが、松本は低い姿勢を保ったままグラブを横にして、目の高さで捕球することができました。背が低いというのはプロ野球では不利とされることが多いんですが、松本は自分の特性をしっかり理解して練習を積み重ねてきたからこそ、できたプレーだったと思います。シリーズを通して彼の守備の上手さは光っていましたね。
今回のシリーズは戦う前から巨人が有利と言われていました。そのひとつの理由はダルビッシュが予定通りに投げられなかったことですね。ダルビッシュが万全で第1戦と第6戦に先発できていればシリーズの結果も変わっていたかもしれません。
両チームともにマークした打者にはあまり仕事をさせませんでしたし、守備や走塁でもいいプレーが出てレベルの高い日本シリーズだったと思います。その中で、普段通りの野球ができた巨人と、できなかった日本ハムの差が、巨人の4勝2敗という結果に表れたんだと思います。
<了>
■大塚光二/Koji Otsuka
1967年8月26日生まれ。兵庫県出身。育英高−東北福祉大−西武。180センチ、78キロ。右投げ左打ち。育英高で本格的に野球を始める。東北福祉大では主将を務め、同級生の佐々木主浩(元横浜・マリナーズ)、後輩の金本知憲(阪神)らとプレーした。89年のドラフト3位で西武に入団。抜群の勝負強さで西武の黄金時代を支えた。2001年に引退後は野球解説者として活躍。社会人野球クラブチーム「一球幸魂倶楽部」の監督も務めている。
この秋には出演しているJ SPORTSの人気番組「ガンバレ日本プロ野球!?」が待望のDVDに。ゲストとして最多出演を誇る金本知憲の登場回を収録している「ガンバレ日本プロ野球!? 金本知憲編 〜こんなアニキはどうでしょう?〜」が10月23日に発売された。
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