コラム

永塚和志
スポーツナビ

「4番目の打者」高橋が見せた「4番らしい姿」
プロ野球日本シリーズ第4戦リポート

2009年11月4日(水)
5回日本ハム2死、左中間にソロを放つ日本ハム4番の高橋
5回日本ハム2死、左中間にソロを放つ日本ハム4番の高橋【共同】

 自らを「4番目の打者」と呼ぶ北海道日本ハムの高橋信二が、先制タイムリーとソロ本塁打による計3打点、猛打賞の活躍で「4番らしい」仕事をした。
 前打席の2点タイムリーに続く、5回の第2打席。2死から巨人の先発・高橋尚成の真ん中に入ってくる甘いカーブを振り抜くと、真っすぐに飛んだボールは一直線に日本ハムファンの待つレフトスタンドの最前列に飛び込んだ。「あれは事故です」と本人も驚くほどの一打でスコアを5対1とし、試合のペースを完全に引き寄せた。

■前夜の屈辱を晴らす貴重な一発

 前日までの3戦で12打数4安打とクライマックスシリーズからの好調を持続していたが、それでも気持ちは落ち着かなかった。
 第3戦、5対3と2点を追う8回表の攻撃で北海道日本ハムは1点を入れ1点差に迫ったが、高橋はダブルプレーで無死一、二塁の好機をつぶしてしまった。前夜は「眠れなかった」という。「4番目の打者」とは言うが、やはり責任感を大いに感じていた。
 その鬱憤(うっぷん)は第4戦で一気に晴らした。3回の場面では前日、「ボールを見すぎていた」という反省から「初球なら何でも行こう」と、初球のスライダーに力強くバットを振ったことで先制点を生み出した。5回の本塁打も1ストライク1ボールという早いカウントからのものだった。普段は状況に応じて、左右に打ち分ける男だが、打点を挙げたいずれのシーンでも左翼へ向けて「無心で」引っ張った。
 4番はバッティング技術だけではなく、メンタルも強かった。前夜の屈辱を一夜にして切り替えた。
「つくづく切り替えが大事と思いましたね。その意味で精神的に少し強くなったのかな」 7回の巨人の攻撃では、この回からマウンドに上がったばかりの宮西尚生が先頭打者に安打を与えたところで駆け寄り、「1本ヒットを打たれたくらいでくよくよするな」と声をかけた。リーダーとしての自覚もある、頼れる「4番」だ。

■快勝にも引き締める「4番目の男」

 ただ、これでシリーズを2勝2敗のタイに持ち込んだだけにすぎない。だから「4番目の男」は大活躍をしても決してはしゃぐことはなかった。むしろ、終盤チームに出たミスと巨人の追い上げに「短期決戦は一瞬なので調子こいてると一気に行かれる。気を抜いていると痛い目に遭うと思った」と、あらためて気を引き締めた。
 北海道日本ハムにとってこの日の勝利で地元・札幌へ戻れることが何よりも大きい。「昨日の負け方なら東京ドームで3タテされてもおかしくなかった」と高橋も安堵の表情を浮かべた。
「4番目の打者」高橋に火が点くと、チームは一気に波に乗る。強力巨人打線を向こうに、高橋が「4番らしい姿」を見せた。

<了>

永塚和志

1975年、茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある。

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