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プロのスカウトは選手をどう見ているのか
パイレーツ極東担当の小川邦和スカウトに聞く


アメリカやメキシコでプレーするなど数々の経歴を経た小川さんの選手を見る目は鋭い  
アメリカやメキシコでプレーするなど数々の経歴を経た小川さんの選手を見る目は鋭い【 スポーツナビ 】
 米大リーグのパイレーツの極東担当として、日本からアメリカへ、アメリカから日本へ移籍する選手の橋渡しをやっている小川邦和さん。現役時代は、3Aやメキシコリーグでプレーするなど国際的に活躍した体験と、パイレーツのスカウト担当ということで、野球選手を見る目は鋭い。果たして選手のどこを見て、スカウトをするのか。「メジャーのスカウトと言っても実績はほとんどゼロだから、あまりえらそうなことは言えないけど」と前置きがありながらも、『スカウトの目』について話してもらった。


「数字には出ない柔軟性が長く活躍するコツ」


 僕が所属しているパイレーツは、投手のスピードとか、俊敏性、一塁まで走るスピードとか、いろいろ能力を測る採点表があるんですよ。ただピッチャーがいくらスピード出てるからって、野球はスピード競争じゃないからね。ピッチャーが一番大事なのはコントロール。それも試合でのコントロールね。練習でいくらいいボール放ってもダメ。練習のときは、その人の内面的なものは分からないから。相手と試合をして初めて、そういうことが分かる。練習より試合が良くなるような選手じゃなければいけないよね。あとはボールのキレ。キレなんかスピードガンでは分からないでしょ。キレを見つけるのが、スカウトの力だと思う。

 あと僕は大事にするのが柔軟性。『フレキシビリティー』というやつね。柔軟性のあるやつは、ケガがないし、技術も覚える。いいバッターは構えたときに、力が入っていないからふわふわと手首が柔らかいでしょ。体が硬いと練習量が増えたり、ピッチャーの場合だと登板数が増えたりして故障になる。特にピッチャーは柔軟性が大事。バッターはバットという武器があるけど、ピッチャーは生身の体が武器だから。体が硬い人は、投げ方に悪い癖がついちゃう。悪い癖はつきやすくて、直りにくい。体が硬い人はこれに当てはまりやすいんだよね。

 ただサーカスの人みたいに柔らかければいいってもんじゃない。僕の言う柔軟性は、手首とか、ひざとか関節部分の柔らかさなんですよ。スキーが分かりやすい例。スキーで曲がるときに、硬い人はひざがつっぱちゃって、ひざを伸ばしたままでうまく曲がれないでしょ。柔らかい人はひざを曲げて、竹がしなるように関節を使うでしょ。ああいう関節の使い方ができる人だよね。こういう人は、子供のときからできているんですよね。子供のときからできないと、大人になってもますます硬くなるからね。だから生まれつき硬い人はダメなんですよね。これは数字には表れないでしょう。だけど大事な部分だと思います。

 いい選手でも故障ばっかりする選手がいるけど、故障することは素質がない証拠。投手だったら、故障の8割は投げ方が悪いから故障する。投げ方が悪い選手は、体が硬い人が多い。そういう人は、一つ故障が治っても、違うところを故障する。「無事是名馬」っていうことわざがあるけど、一流選手じゃなくても、故障しないで長くやるってことは素晴らしいことなんですよ。そういう選手をたくさん取りたいですね。


「一番の基本は健康な体」


 あと若いスカウトには、気になる選手の悪いところを見ろ、と言っていますね。悪いところを見ると、その人の性格がよく出るから。特に高校生は将来性を見るでしょ。将来性を見る場合は、悪いプレーのときの態度を見たほうがいい。スカウトの言い訳で今まであったのが、「性格まで分かりませんでした」って。だったら「性格まで調べろよ」なるじゃない? 「何、言い訳こいてんだ」って。エラーをした後の打席で、何とか取り返そうと必死になってやるタイプか。3三振したら、4打席目は、「今日は打てんわ」って打席に入るのか、何とか打ってやろうと打席に入るか。打たれたら、マウンド上でどんな態度をするか。マウンドさばきは、マウンドマナーだと思っていますからね。悪いときにどんなプレーをするかですよ。

 でも今は、野球するやつがダイエットする時代だからね。少年野球で教えていても、30人に2、3人は必ず太った子が入ってくる時代だから。僕らの時代では本当に考えられないんだけど。そんな子が野球の技術がどうのこうの言うよりも、キチッとバランスの取れた健康な体にするのが先だよね。そんなことは、うまくなるとか、ならないとかの話じゃない。解説者が「基本に戻って」とか言うけど、「基本て何ですか」と言うと、9割は答えられないです。基本は健康な体でしょう。基本的な健康な体で、プロ野球選手になるんだったら、さらに頑健な体じゃなくてはいけないからね。

 最後に言いたいのは、僕は能力があろうと、なかろうと、野球や人生に対する態度を重要視しますね。長髪や金髪でちゃらちゃらしているやつがいるけど、髪型に神経使うひまあったら、野球をもうちょっと一生懸命やれって思うよね。例えばプロに入って、一流選手になった場合は、その人が野球界のステータスを影響するぐらいの選手になるわけだから。やっぱりプレーの面においても、野球大好きっていう『野球小僧』でいてほしいです。

<了>


■小川邦和/Ogawa Kunikazu


1947年2月1日生まれ。広島県出身。尾道商高−早大−日本鋼管−巨人−米大リーグ3A−広島−メキシコリーグ。尾道商高時代は選抜準優勝。早大、日本鋼管で活躍し、72年ドラフト7位で巨人入団。2年目に12勝を記録した。78年にアメリカに渡り、マイナーリーグでプレー。81年に日本に戻り、広島でプレー。84年からはメキシコ・リーグで活躍した。その後、ロッテのコーチ、米大リーグのマーリンズの極東スカウトを経て、現在はパイレーツの極東スカウトを務める。プロ野球通算は248試合、29勝20敗9セーブ、防御率3.83

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