記録達成のイチロー、生の声から見える哲学 (1/3)
木本大志の『ICHIRO STYLE 2008』 VOL.8
■らしいヒットだった3000本目
「あっ、詰まった」
打った瞬間の気持ちを聞かれたイチローは、無邪気に笑う。
「アハハハハ。ちょっと狙っていたので、初球を。でも、『詰まった』と思いましたね。でも、『ヒットだ』、みたいな」
日米通算3000本安打達成の瞬間だった。
1打席目の初球。球審が高らかに宣言したプレイボールがまだ耳に残る中で、振りにいった。顔はライトスタンドだが、打球は左中間へ。らしいと言えば、らしいヒットだった。
一塁を駆け抜けるまで空席の目立つ客席は、「シーン」。恐ろしいぐらいに。
しかし、どこからともなく、拍手が沸き上がると、ジワリジワリと球場全体に広がる。
それを予想していなかったイチローは、戸惑いながらもヘルメットをとって応えたが、歓声が鳴り止まない。イチローは、もう一度ヘルメットを脱いだ。
「えっ、もう1回? (笑)」
■長さを感じたこの1週間
節目。英語ではマイルストーンなどと訳されるが、改めて思うことを問われれば、イチローは言った。
「92年に初ヒットを打って、まあ、嫌々打った初ヒットですけども、それからここまで別に長いとは思わない。でも、この1週間はやけに長かった」
“嫌々”とは、一軍を拒否したのに、無理やり連れて行かれた福岡遠征でのヒット、という意味のようだが、この1週間が長く感じた理由については、こう語った。
「意識をさせられて、結果を出せない日というか、打席が続いたから」
この間、イチローは急激に増えたメディアから、「負のオーラを感じる」などと話し、「障害になっている」とも皮肉まじりに口にしている。
存在を感じること自体が無言のプレッシャー。イチローはどう対処したのか。
「普段なら外で練習するものをしなかったり。それは僕にとって必要なことだったので、やった」
・【特集】イチロー3000安打達成への軌跡 (2008/7/30)






