松井秀、ブーイングの嵐の中で(1/2)
偉大な先輩たちの遠い背中
2007年10月09日
杉浦大介
松井もジーターもA・ロッドも……
プレーオフ地区シリーズ第4戦、5回2死一塁の第3打席。松井秀喜は初球を簡単に打ち、平凡なショートフライに倒れた。そしてその直後、盛大なブーイングがヤンキー・スタジアムを包んだ。
ブーイング?
ニューヨークのファンと常にいい関係を築いてきた松井へのものだとしたら、それはあまりに意外に思えた。いや、おそらくそのブーイングは、インディアンスの前に敗色濃厚だったヤンキースのチーム全体に向けられたものだったのだろう。いずれにしても、象徴的な光景だった。
地元の熱狂的な歓声の前で、ヤンキースはまたもいいプレーができなかった。デレック・ジーターも、アレックス・ロドリゲスも、王建民も、松井も、そしてジョー・トーリ監督も……誰もインディアンスを打ち負かせなかった。
200億円以上の大金をチーム作りに費やしながら、これで7年連続でワールドシリーズ制覇を逃した。3年連続地区シリーズでの惨敗。しかも、昨季はタイガース、今季はインディアンスという経験不足の低予算チームを相手に、あまりにも完ぺきな形で敗れたのだ。
救世主のいない今のヤンキース
完敗を喫したヤンキースの戦犯を探し始めたらきりがない。先発メンバーで打率3割以上はロビンソン・カノただ1人。先発で好投できたのはアンディー・ペティットのみ。そして今夜の第4戦では、エースの王とチームリーダーのジーターがブレーキになった。王は1回0/3でなんと4点を奪われて降板。そしてジーターは、第1、2打席こそヒットを打ったが、追い上げムードで迎えた6回の1死一、三塁のチャンスを痛恨のセカンドゴロ併殺打でつぶしてしまった。このジーターこそが、これまで何度も窮地で救世主的活躍を見せてきた選手のはず。しかし、肩を落としてベンチに戻るキャプテンの背中が、きょうほど小さく見えた夜はこれまでになかった。
松井にしても、今夜は2打数無安打2四球、シリーズ全体でも11打数2安打0打点に終わった。それでも、5四球と出塁率4割3分8厘はチームトップ。こうやってつなぎ役になれるのは確かに素晴らしいし、実際に筆者はこれまで松井の献身的な姿勢を何度も絶賛してきた。
だがその一方で、インパクトのある活躍はまったくできなかった。考えてみれば、ヤンキースにとって重要な試合で、松井が流れを大きく変えるような働きを見せたのはいつが最後だったろう?
「これがチームの力、自分の力なんだし、受け入れざるを得ない。(自分自身も)年間を通じていいプレーをすることが少なかった。それが力だと言われればそれまでですけど」
第4戦を終えた試合後、松井は力なくそう語った。これが本当に年俸1400万ドル(約16億円)を受け取る選手の力なのだとすれば、少々寂しい。
<続く>
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