鮮烈デビューは「偶然」?
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| 【 イラスト:カネシゲタカシ 】 |
ジャパニーズポップの歌詞の部分が、英語のフレーズになっているものは多い。「I LOVE YOU」や「I MISS YOU」など、英語を話す人も頻繁に使っている定番のフレーズはいいのだが、たまに「え、これ現地で通じるの?」と思うようないわゆる“日本語英語”もみられる。以前何かのテレビ番組で、英語の歌詞の部分が実際に使われるか、米国人に聞いたところ、「これは使わない」という反応が多かった。ちんぷんかんぷんな意味になるようで、「言語って難しいなぁ」と一人でつぶやいた記憶がある。ただ、そのときはまさか、米国でこの感覚を思い出すとは思わなかったが。そう、それは福留孝介のデビュー戦でも起こった(happened)。
福留の衝撃デビューの陰で、カブスの本拠地リグレー・フィールドのスタンドでは、“笑劇”?とも言える日本語のプラカードがファンの間に出回った。
「偶然だぞ」
テレビで目にした人やメディアのニュースを読んだ人もいると思うが、福留が活躍するたびにこの「偶然だぞ」のプラカードが掲げられた。本塁打を打って、活躍して、「偶然だぞ」っておい! と、日本人なら突っ込みたくなるが、プラカードの後ろの英語にはこう書いてある。
「It’s gonna happen」
「あー」と素直に得心して、思わずくすっと笑みをこぼした。happenを辞書で引くと、「偶然〜なる」とある。完全なる誤訳。もちろんオフィシャルで配っているわけではなく、謎の「It’s gonna happen」男が配っているらしいが、「日本語訳間違えてるよ〜、面白いけど」と教えてあげたいものだ。
本当の意味は「きっとくる!」
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| 日本語で「偶然だぞ」と書かれたプラカードを掲げて応援するカブスのファン【 (C)Getty Images/AFLO 】 |
さて、この「It’s gonna happen」。日本語訳では何が最適かというと、これまた難しい。福留の通訳、リュウジ荒木氏に話を聞いても「日本語に訳すとなると難しいですね」と言っていたが、「直訳だと『いつか起こるよ』って感じで、すごく意訳すると『きっとくる』とか、『きっと出る』とかですかね」と教えてくれた。
ちなみに、この「It’s gonna happen」は、カブスの場合「100年ぶりの優勝」を指す場合が多い。99年間も待ち続けているファンは、それでも愛すべきカブスの優勝が「きっとくる」と信じ、リグレー・フィールドに足を運んでいるのだ。
福留本人は、「勘違いをして作ってるみたいなんで、それはそれでそのまましておけばいいんじゃないですか(笑)」とむしろ楽しんでいる様子。
まぁ、ファンに悪気があるわけではなく(きょう現場に向かう途中プラカードを持っていたファンに話を聞くと、「この文字どっちが上?」と話していた)、真剣に福留の活躍を祈っているのでこのままにしておいてもいいかもしれない。カブスがプレーオフに進んで、福留が今の調子で活躍していても、この「偶然だぞ」プラカードが出回っていれば、逆に面白い。もちろん、10月に入っても偶然なわけないだろ!と突っ込みを入れたくなるが……。
ただ、前評判の高かったカブスは開幕2連敗。地区最大のライバル、ブルワーズにいいところなくやられている。いつもは元気いっぱいのルー・ピネラ監督も、試合後はぐったりとして会見場に顔を見せる。そう、今こそカブスファンは信じよう。この2連敗こそ、「偶然だぞ」。
<毎週木曜日掲載>
■阿部太郎/Taro Abe
1978年1月9日生まれ、大分県杵築市出身。上智大卒業後、シアトルの日本語情報誌インターンを経て、スポーツナビ編集部でメジャーリーグを担当。2008年1月よりフリーライターとして独立。米国シカゴを拠点に取材活動を行う