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『ICHIRO REPORT 3年目の真実』 VOL.14
区切り…3年目のシーズン総括
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メジャー3年目にして初めて精神的プレッシャーに悩まされたイチロー【(C)Getty Images/AFLO】
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3年きっちり実績を残してこそ認められる
かねてから、イチローは話していた。
「3年は、区切りのシーズン」
「3年間、きっちり実績を残してこそ、認められる」
果たしてその成績は、679打数(リーグ2位)212安打(リーグ2位)、3割1分2厘(リーグ7位)、13本塁打、62打点、111得点(リーグ7位タイ)、34盗塁(リーグ5位)。
これらの数字に、文句のつけようのないところだが、イチローは今年の満足度を聞かれたとき、歯切れが悪かった。
「そうであったり……なかったり……その繰り返しでした」
今季最終戦を終えた直後のクラブハウス。プレーオフを逃したとはいえ、選手の間にはリラックスしたムードが漂う。至るところで来季を誓う選手の和ができ、笑顔があふれていた。
だが、メディアに囲まれたイチローの表情は、いつにも増して険しい。
――キャンプが終わったとき、「自分自身に期待している」と話していたが、その期待値と結果を比べるとどうか?
「それも、(満足)できたり、できなかったりですね…」
はっきりと口にはしなかったが、チームをプレーオフに導けなかったこと、大事な終盤で本来の役割を果たせなかったこと――そんな思いがイチローの表情から笑顔を消したのかもしれない。
吐き気、息切れ…イチローを襲ったかつてないプレッシャー
「吐き気がしたり、息切れがしたり…」
イチローはかつてないプレッシャーに苦しんだ
8月の中旬以降、イチローは不振に陥る。チームの状況とともに、200本安打さえ達成できるかどうか、不安に感じた。それは、プレッシャーとなってイチローにのしかかり、かつてない現象をイチローは体験する。
「プレッシャーや怒りによって、吐き気がしたり、息が苦しくなったりするというのは、今までになかったことですから、自分でも驚いたんですよ。それは、今までの僕にはインプットされていないことでした」
経験したことのないこと……。イチローの実績は、経験こそが支えてきたといっても過言ではない。
「どうしてそんなにチャンスに強いのか?」と聞いたときも、平然と答えたものだ。
「やはりそれは、経験だと思いますね。いろんな経験から、どんなことを学んでいくか、どんな自分を創っていくか。それが大事だと思います」
インプットされていない状況を、メジャー3年目にして、イチローは味わった。
「これからは、そういうこともありうるという、予測はできますから…」
これもまた経験。来年以降は生かされるのか、と聞けば、まだ少し慎重だった。
「数字を重ねていくことによって、出てくるプレッシャーというのは、そうじゃない状況で訓練するということが難しいですから…」
来年、もし同じような状況を経験したときこそ、初めてその答えは出せるのかもしれない。
新しい、「イチロー」の想像
イチローは、この1年で何を学んだか
ただ、3年間をトータルとして振り返ったとき、イチローの声は少しだけ弾んだ。 「(区切りの3年目をきっちり終えることが出来たことは)個人の大きな目標でしたから、さらに3年連続で200本のヒットを打つことをできた――その達成感というのは、物凄く大きなものです」
新人時代から、3年連続で200本以上の安打を打った選手は、これまでわずか2人。そうした事実を意識していたかどうか分からないが、100有余年のメジャーの歴史において、たった3人目という偉業が何を意味するのか、イチローにもたらした達成感も、想像に難くない。
いずれにしてもイチローが、「精神的要素が苦しんだ原因」と認めたことは驚きに値する。イチローはこうも言った。
「メンタルが肉体へ及ぼす影響が、とてつもなく大きいものだと言うことを改めて感じました」
屈辱、挫折、そして収穫。
順調過ぎたイチローのメジャーキャリアにも初めてストップがかかった。が、それは、イチローが一段と大きなプレーヤーになる通過点なのかもしれない。吐き気、息切れがするほどのプレッシャーはどこからやってきて、どう体を蝕むのか。それを学び、これから消化する。イチローは、この長いオフシーズンをかけて、この屈辱から、新しい自分を創り上げようとしている。
<了>
■木本大志/Taishi Kimoto シアトル在住のスポーツジャーナリスト。アメリカでプロスポーツビジネスにおけるPR、マーケティングなどを学ぶも、気付けばもの書き。『Number
Web』で、過去2シーズン「イチローメジャー戦記」を担当。今年は、スポーツナビのほか、『Major.JP』『日本経済新聞』等でメジャー・リーグのコラムを掲載予定。
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