コラム
7月ブレーキのイチロー、200安打に届くのか? 数字に見る異変
■過去最高ペースの三振数
7月最後の試合(現地31日のツインズ戦)で3三振を喫したイチロー。1打席目の見逃し三振は、主審の誤審気味だったとはいえ、2打席目は内角いっぱい。3打席目は外角低目のボール球に手を出して空振り三振に倒れた。
第1、第2打席とも、三振に倒れたあと、あえて主審との距離を詰めてからダグアウトに戻ったように見えたのは、せめてもの抵抗か、偶然か。
いずれにしても2008年と09年は1試合3三振がなかったイチローだが、今年はすでに3度目となっている。三振の数は8月1日現在、すでに60個に達し、56試合を残して1年目の53個をすでに超えた。目下92個ペースで、年間としては07年の77個がワーストだが、その数字も大幅に上回る勢いとなっている。
打席当たりの三振の確率的にも今年は13.7%で、これまでの最高値11.4%(07年)と比べても、率が高い。
ただ、そうしたキャリアハイのペースで増え続ける数字とは対照的に、ヒットの数が伸びていない。8月1日の試合でも4打数無安打に終わり、106試合で134安打。1試合当たり1.26本で、キャリアのヒットペース――1.41本/試合を大きく下回っている。
このペースなら残り56試合で71安打。で、ここまでの数を足すと、計205本という計算。これでは貯金がないのも同然で、ふくらはぎを痛めて欠場した昨年のようなことがあれば、10年連続200安打はたちまち危うくなる。
ちなみに、200安打到達には残り56試合で66安打が必要(表2※1)だが、これはキャリアで2番目に遅いペース。これまでで一番遅かったのは08年で、56試合を残して69安打を必要としたが、この年は8月に43安打を記録して、安全圏に持ち込んだ。
■2シーズンぶりに3割を下回った7月の打率
200安打達成に黄信号がともったのは、なんといっても7月のブレーキだろう。7月の月間打率は2割4分6厘で、月間打率が3割を切ったのは、08年の9月以来のこと(表1)。そのときは2割9分8厘だったので、ここまで悪かったのは、08年の4月以来(2割5分2厘)と、実に久々のこととなる。
また、7月は28試合で安打数が29本。月間でフル出場してヒット数が30本に届かなかったのは、06年8月以来だが、こうして、何から何まで数年前の記録をさかのぼらなければならないこと自体、今回の異例な状況を際立たせている。
今年全体で見た場合、例年と極端に違う数字を探せば、例えば、1打席目の打率(表2※2)がある。ざっと調べて見ると、1打席目の打率が3割を割ったことは2度あったが、01年は2割7分3厘、03年は2割9分5厘と、さほど極端な数字にはなっていない。しかしながら今年は2割3分8厘で、去年と比べれば1割ほど、最高だった06年の3割8分2厘と比べると、約1割4分もの差がある。
また、昨年はデーゲームで4割ちょうどという打率を残すなど、これまでデーゲームにはめっぽう強かったが(表2※3)、現時点では2割5分6厘。3割を切れば、キャリア初だ。
だが、それらの数字以上に異変といえるのが、やはり三振の数。その周辺の数字をたどると、例年に比べて“ボール球に手を出している”というデータが見えてくる(表3参照)。
ウェブサイト『fangraphs.com』によれば、イチローが105試合を消化した時点で、ボールに手を出す確率は36.1%。この確率というのは、データが残る02年以降、彼のキャリアの中でも最も高く、年間262安打を放った04年と比べれば20%近くも上がっている。
■相手投手はボール球で勝負
こうした傾向に対しドン・ワカマツ監督は、「いつもの年より、ボールを振らされている」と分析した。
「振っている」ではなく、「振らされている」というのがポイントで、「イチローは例年よりもファールの数が多い。それは打ち損じではなく、例年に比べ、打てる球が少ないということ」というのが、指揮官の見方である。
相手投手にしてみれば、仮に四球で歩かせたとしても、イチローをかえす打者がいないのだから、それでも構わないという攻めが可能。イチローに対しては、ストライクゾーンで勝負する必要性がない、ということになる。
ただ、昨年もボールに手を出す確率が32.1%と比較的高かったのに、146試合で225安打。ケガがなければ250安打ペースだった。となると、ボール球に手を出している――いや、出さざるを得ないからヒットが出ないというまとめは、やや一面的で、結局、イチローのデータ分析が、常に矛盾をはらむという一例にしかならないかもしれない。
いずれにしても、確実に一ついえるのは、マリナーズの試合を見る価値が皮肉にも上がったということ。優勝争いからは、遠い昔に脱落した。その中でイチローが、10年連続200安打に向けて、たどり着けるかどうか、というぎりぎりの戦いを続けている。
相手が、ストライクゾーンに投げてこないとしたら、イチローはどうその状況に対処するのか。7月の不振で、結果としては見どころが増したといえそうだ。
<了>
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