コラム
マリナーズのトレーナーが語る成功する選手の思考力とは (2/2)
森本貴義氏インタビュー
■自分との対話で得られる無意識化
――意識の無意識化。選手のどこにそれがうかがえるのか?
例を挙げると、スランプになって、また上がって来る選手と、そうではない選手がいますよね。後者は、考えてしまうんですよ。
――スランプ、故障は、それを判断する目安になりうる?
なりえますね。常に自分と対話している選手は、ケガをしても、復帰が早い。でも、今まで野球だけをやってて、いきなり大きなケガをしてしまって野球を離れると、考えすぎるんですよ。考えるということは、意識してしまっている。無意識化できないがゆえに、ダメになった選手を見てきています。彼らは、ただ、今までよりも、野球に献身的になっていると思いがち。でもそれが、自分の体にブレーキをかけてしまっている場合もある
だから、それを若い段階で、(無意識化することを)技術として構築できたら、スランプになっても、それが短いと思います。イチロー選手でも、年に何回か、おかしいときがあります。明らかに打ち方がおかしかったり、立ち遅れてたりしているときが。でも彼は、修正するものを持っている。2〜3日したら、戻るわけですよね。それはいい選手になりうる要素です。
――成功する選手と失敗する選手とでは、トレーナーの利用の仕方も違う?
全然違いますね。いい選手は、ポイントなんですよ。全部トレーナーにやって、じゃないんですよ。これは自分でできること、これは、自分一人ではできないから、手伝ってもらいたいとか、それを分かっているわけです。全部やって欲しいっていう人は、自分の中で考えてないんですよね。ただ、そんな選手でも、2〜3年すると変わって来ることもある。時間はある程度必要だと思います。
■イチローも長年かけて今のスタンスに
――今季、イチロー選手は、ホームの場合、試合後にサウナを利用する。それをまねる選手もできてたとか
そうですね。イチロー選手が入るようになってから、何人か若い選手が入ったりしますよね。ただ、毎日続ける選手はいないですよね。本当は、いい選手がやっているからオレもやろう、じゃダメなんですよ。そこを見るんじゃなくて、そこに行き着くまでの考え方を学んで欲しい。
――でもやってみて、合わないというならいい?
それでもいいんですけど、でももっと、思考の深さを考えて欲しいですね。だから、イチロー選手のトレーニングをしても、イチロー選手にはなれないと書いたんですけど、そこだと思うんですよ。イチロー選手のやっていることは素晴らしい。それは、彼の体にとっては素晴らしいことなんですけども、それをほかの野球選手にさせても、よくないわけですよ。自分に何が必要で、どういうことをするのかを考えないといけない。彼にしても、今のスタンスに行き着くまで、10年以上かかっているわけですよね。今回のサウナも、いろいろなことをやっての選択ですから。もしからしたら、何かがあって、来年はやらないかもしれない。とにかく、今の自分に何が必要かを、感じないといけない。それは、自分と毎日向き合うころで、気付くことができると思います。
本書は、野球の世界を舞台としているが、実社会にも応用できる考え方を紹介している。自分にとって最善の道を見つけること。自分と向き合うことでそれを知る。本書を鏡として、自分を見つめることができるかもしれない。
<了>
森本貴義(もりもと・たかよし)
日本でオリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)のトレーナーを務めた後、2002年に渡米。04年からシアトル・マリナーズアシスタントアスレティックトレーナーとなり、08年のWBCでは日本チームに帯同。2009年に『一流の思考法』(ソフトバンク新書)を上梓した。シーズンオフは日本でトレーナーなどの人材育成教育をする株式会社REACHに所属し、関西を中心に活動している
・マリナーズを導くドン・ワカマツのルーツ=日系人監督としての強い意志 (2009/6/18)
・「城島ノート」で勝ち取った信頼 (2009/5/7)
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丹羽政善
1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。2010年3月に『メジャーリーグビジネスの裏側 本当に儲かってるのはこの人達!』を上梓した
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