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WBC特別ルール
イチロー、最高と最悪のはざまで
日本vs.米国戦
2006年03月13日
木本大志
先頭打者本塁打を放ち、幸先のいいスタートを切ったイチローだったが……【 (C)Getty Images/AFLO 】
先頭打者本塁打を意識していた!?
試合後の記者会見に臨んだイチローは、正面を見据えたまま、微動だにしなかった。まばたきを忘れたかのように目を見開き、口を真一文字に結ぶ。後味の悪いその試合をどう消化すべきか、彼は質問に答えながらも、別のところに気持ちがあるかのようだった。
滑り出しのシナリオ。あれ以上は期待できまい。
試合開始、1分。3球目をとらえた快音は、試合開始直後の喧騒(けんそう)が残るスタンドに、一瞬の静寂を与えた。右中間へ伸びる打球を、誰もが追う。フェンスを越えることに疑いはなく、それがやがてスタンドに突き刺さると、観客にどよめき。グラウンドに目を移すとそのとき、イチローは優雅にセカンドベースを蹴った。
「こんな舞台で、狙うことはできない」と言うものの、先頭打者本塁打を意識していたことを、言葉の中ににおわせた。
「アメリカに勝つためには、先に点を取ること、そして、ディフェンスでしのぐこと。これが絶対条件だと思っていましたから。まさか、まさかホームランという結果は期待できなかったけれど」
ダッグアウトに返ったイチローは、陽気に振る舞う。チームメートとのハイタッチに笑顔が漏れた。
7回のチャンスに凡退…「100パーセント、僕のミス」
「僕の完全なミスです」と敗戦を振り返ったイチロー。サヨナラ勝利に喜ぶ米国ナインらを横目にグラウンドを後にした【 写真は共同 】
それより先、国歌を聴きながら、イチローは背を正した。
「この野球の国に来て、最高の舞台で君が代を聴いて、あらためて日の丸の重みというものをあの瞬間に感じたし、選手はみんな国歌を聴いて、強い気持ちを持ってゲームに入ることができたと思います。こういう気持ちになったのは、僕は初めてでした」
そんな最高の集中力で臨んだ第一打席。かつてないその状態が、予想以上の結果を引き寄せたのかもしれない。ただ、負けたことを問われると、その顔が、一層険しくなった。そして、自身が7回のチャンスで打てなかったことに、厳しい言葉で責める。
「僕の完全なミスです。100パーセント、僕のミス」
同点とされて迎えた7回表、日本は2死一、二塁のチャンス。ここで打席に立ったイチローは2−3からの6球目を引っ張って、平凡なセカンドゴロだった。
「あのチャンスでは、何としてでも打ちたかったが、あの結果については、打ち取られたのではなくて、僕がミスをしたことによって発生したこと」
ミスの内容に100パーセントとまで言い切るその理由を帰り際、車に乗り込む直前に聞いたが、「その通り、そのまま」と唇をかんだ。
「後味は悪いし、明日ゲームがあったらつらい」
9回は、勝負を避けられた悔しさに、唇をかむ。2死三塁。捕手が立ち上がると、スタンドに詰めかけた日本のファンだけではなく、アメリカのファンからもブーイングが巻き起こったが、あのケース、確かにイチローに勝負を挑むメジャーの投手はいない。
試合終了後、およそ1時間が過ぎても、イチローは何も整理できていないようだった。その気持ちを、正直に露呈する。
「消化しづらいゲーム。後味は悪いし、明日ゲームがあったらつらい」
ただ、大きな自信をつかんでいたことも感じられた。開始直後の本塁打を、こうも振り返っている。
「アメリカラウンドの最初の打席が、そうなった(本塁打)ということは、僕の新しい自信にもなりましたし、これだけのプレッシャーの中で、思い切りバットが振れたということが、大きなことだった」
その自信と経験。明後日からのメキシコ、韓国戦で生かすことが求められる。
<了>
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