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コラム Column

プロってなーに? 銅の“長嶋ジャパン”
アテネ五輪・野球

2004年08月26日
(文=松瀬学)  

銅メダルで喜びも控えめな日本代表
銅メダルで喜びも控えめな日本代表【 共同 】

喜び控えめな銅メダル


 つらい銅メダルだった。
 野球の日本代表はカナダに大勝した。目標としていた金メダルへの道が閉ざされた後の3位決定戦。勝利にも喜びは控えめだった。ゲームセット直後に少しだけ笑顔が並んだ程度で、通路では硬い顔つきに戻っていた。

 先制2ランを放った城島は会見で打ち明けた。「昨日は寝るまで落ち込んでいて、今朝、起きても落ち込んでいた」。前日の敗戦の責任を1人で背負っているかのようだった。
 プロだけで編成されたチームによほど重圧を感じていたのか、口から漏れるコメントが痛々しい。「僕らは、日本のプロ野球のいろいろな問題があったり、子どもたちの夢であったり、日本の野球ファンのいろいろなものを背負ってここにきた」「プロの自覚を持ってやった。メダルの色は違うけれど。銅を取りにここにきたわけじゃない」「胸を張ってプロらしく、帰りたい」。


プレーすることで報酬をもらうプロは結果がすべて


 要するにプロ軍団である以上、日本は敗戦を許されない状況だった。では、プロってなんだろう。ひと言で言うと、プレーすることで報酬をもらっている選手である。職業野球選手といったほうが分かりやすい。
 ただオリンピックではプロでもアマチュア(死語かな?)でも当然、勝利に執着する。プロはアマより強いという意味で、プロは勝たないといけないと言っているのだろう。日本にとって銀以下は「敗戦」を意味したのだ。

 プロとは、決して待遇を求めるものではないだろう。選手村に入らず、外国選手と交流をせず、ホテルを借り上げて泊まる。専属のコックを連れていく。年俸だって、おそらくキューバの選手が聞いたら、腰を抜かすくらいの金額をもらっている。でも、それがすなわち、プロではない。

 プロは結果がすべてなのだ。アマはプロセスも重視する。だから、プロはアマに負けないように必死で準備し、全力を尽くし、勝敗にこだわるのだ。同じチーム(豪州)に打撃戦、投手戦で連敗するのは、やはりプロとして恥ずかしいと思うのだが。

 今回は金メダルがすべてなら、過程に執着する必要はなかった。キューバはリーグ戦ではメンバーを落としたら、負け試合も考えながら戦った。弱いギリシャに5対4である。豪州だってカナダに大敗している。



監督不在で勝てるほど甘くない五輪


 かたや日本は、城島の言葉を借りると、「1試合も負けないで金メダルを取るんだという使命感」に縛られていた。選手はがんばった。これは首脳陣の戦略の問題である。

 で、ずっと抵抗があったのは、「長嶋ジャパン」という表現である。ジャパニーズ・メディアは何の疑問も抱かず、「長嶋ジャパン」を常用してきた。これって、やっぱり変じゃないのか。そりゃ、カリスマ長嶋さんがすごい求心力を持っているのは分かる。でもオリンピックは監督不在で勝てるほど甘くない。どの国も必死で準備し、データを収集分析し、監督の「これでいく」とのド迫力で戦うのだ。

 どこぞのスポンサー戦略に乗っかっての誇大広告みたいなものだったのでなかろうか。中畑ヘッドコーチが指揮を取ったけれど、選手はどちらを見ればよかったのだろう。
「監督不在でも勝てる」と思っていたとすれば、それこそプロではない。オリンピック、あるいは対戦相手、日本のオリンピアード(選手)に対する冒涜(ぼうとく)だったのではなかろうか。
 プロである以上、今回の敗戦の検証は真摯(しんし)になされなければいけない。それが4年後の北京の第一歩となる。
<了>

松瀬 学/Manabu Matsuse

1960年長崎県生まれ。79年福岡県立修猷館高校卒業。83年早大卒業、共同通信社入社。高校、大学時代はラグビー部に所属。共同通信社では一貫してスポーツ畑を歩む。プロ野球、大相撲などの担当を経て、JOC、IOCなど国際関係をカバー。ソウルからバルセロナ、アトランタ、シドニーの各夏季五輪、長野、ソルトレークシティー冬季五輪など豊富な国際大会取材歴を持つ。96年から4年間はニューヨーク勤務。2002年1月共同通信社を退社。東大研究生となる一方、フリージャーナリストとしてサッカーW杯などもカバーする。 著書に『汚れた金メダル−中国ドーピング疑惑を追う』(文藝春秋、1996年度ミズノスポーツライター賞受賞)、『早稲田ラグビー再生プロジェクト』(新潮社)『宇津木妙子・麗華物語-日中に架けるソフト』(集英社)がある。

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