全国10地区の秋季大会優勝校が集結した神宮大会は、初出場の大垣日大高(岐阜)が優勝を飾った。
「奇跡に近いと言うか、野球の重さ、怖さの方が多いのかな」
65歳の阪口慶三監督が優勝を振り返った。決勝の東海大相模高(神奈川)戦では守りが乱れ4失策。それを、左打者8人の打線が取り返した。特に大活躍したのが3試合で14打数9安打5打点の森田将健(2年)。東海大会では6番や7番を打っていたが、この大会では1番に起用した阪口監督のさい配がずばりと当たった。3番・後藤健太、4番・安藤嘉朗と1年生が中軸を担うだけに、思い切りのいい2年生が1番で引っ張る効果は大きい。
投手では1年生エースの葛西(かっさい)侑也が躍動。左スリークォーターでリリースがサイドから出てくるため、打者にとっては打ちにくく、球速以上のキレもあり、対戦した打者が差し込まれる場面が何度も見られた。ただ、怖いもの知らずの1年生という反面、時折マウンド上で若さも見せ、さらなる投球術の向上へ努力してほしい。
決勝でリリーフした阿知羅(あちら)拓馬(2年)も将来性を感じさせた。187センチ85キロの恵まれた体格から投げ下ろされる直球は威力十分。本来ならこのチームではエース候補だったが、秋の公式戦ではこの決勝が初登板。だが、それを感じさせない堂々とした投球で試合を立て直した。この好投を自信につなげてほしい。
準優勝に終わった東海大相模高。関東大会4試合を一人で投げ切った149キロ右腕・一二三(ひふみ)慎太(2年)が貫禄を見せた。特に準決勝の帝京高(東京)戦では5安打完封。カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークにシンカー系のボールと球種も多彩で、ピッチングセンスもずば抜けており、センバツが楽しみだ。ただ、チームとしては現状、エースで主将の一二三の存在が大きすぎる。門馬敬治監督が関東大会優勝後に「一二三のような存在があと2、3人出てきてくれればいいのだが」と話していた。その言葉の意味が一二三が先発しなかった決勝の選手起用につながっていると思われる。ケガで不出場となった本来正捕手の大城卓三(2年)など、来春ではメンバーの入れ替えも予想される。
準決勝で敗れた帝京高、今治西高(愛媛)もこの神宮を魅了したチームだ。夏のメンバーが多く残る帝京高はエースの鈴木昇太(2年)、1年生右腕の伊藤拓郎ら投手陣に絶対の自信を持っている。打線は現状ではまだまだだが、春には再び甲子園を沸かせてくれるだろう。今治西高の大野康哉監督は、徹底的に勝ちにこだわったさい配を見せた。エンドランやホームスチールなど動きに動いたのはもちろん、投手交代のタイミング、守備の起用法などに特徴が見られた。大野監督は、「1年生の多いチーム、いい経験はしたが、非力さ、迫力不足を痛感した」と話し、更なるチームの引き締めへ思いを強くしている。センバツではポイントなりそうなチームに思えた。
一二三や帝京高の投手陣と並んで今大会注目された右腕が神戸国際大付高(兵庫)の岡本健(2年)と開星高(島根)の白根尚貴(1年)。最速144キロの速球を誇る岡本は1回戦の今治西高戦に先発した。近畿大会後に体調を崩した影響で5回でマウンドを降りたが、無失点と好投を見せた。さらに、代わった1年生左腕の大川賢人が大きな経験を積んだ。9回2死から四球をきっかけにサヨナラ負け。青木尚龍監督はこの大川に期待を寄せており、全国という舞台で1球の怖さ、次に同じ場面を迎えた時にどう攻めるかを学んだはずだ。
白根は準々決勝の今治西高戦、2対2で迎えた7回につかまった。最速147キロを誇る右腕は野々村直通監督が「ことしは白根がいるから」と語るほどの信頼を寄せているだけに、直球勝負にこだわって痛打されたことを今後に生かしたい。
九州大会を初出場初優勝で神宮に乗り込んできた嘉手納高(沖縄)は堅い守備が自慢だったが、6失策と崩れた。ほとんどの選手が初めて体験する首都・東京の空気と、神宮の人工芝に戸惑った面もあったが、終盤の追い上げが強烈なインパクトを残した。
ほかにも1回戦で投げ合った高岡商高(富山)の鍋田浩成(2年)と秋田商高(秋田)の片岡元気(もとき・2年)、さらにフォークが武器の北照高(北海道)・又野知弥(2年)らセンバツが楽しみな投手が多かったのが今大会の特徴だ。
<text by 松倉雄太>
※学年は神宮大会当時
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