コラム
田尻賢誉
スポーツナビ

球児への提言――基本を怠らず全力プレーを
タジケンの高校野球観戦記 Vol.18

2008年8月19日(火)

■見ていて気持ちの良くない抗議や怠慢プレー

大会新記録の15打点を稼いだ大阪桐蔭・萩原(左)など好選手も多く見られた反面、基本を怠ったプレーも目立った大会だった
大会新記録の15打点を稼いだ大阪桐蔭・萩原(左)など好選手も多く見られた反面、基本を怠ったプレーも目立った大会だった【写真は共同】

 いつから高校野球はこんなふうになってしまったんだろう。最も驚いたのは、取材時間中に携帯電話をさわる選手が複数いたことだ。試合終了後、報道陣には合計23分間の取材が許されている。勝ったチーム、負けたチームともに監督と指名選手がお立ち台へ。そのほかの選手には取材ルームで話を聞くことになるが、当然ながら試合で活躍した選手に記者は集まる。取材されず、手持ちぶさたになったのか、一刻も早くメールチェックをしたかったのか。イマドキの高校生といえばそれまでかもしれないが……。ちなみに、取材ルームは報道陣でさえ、携帯で話していると係員から怒鳴られる。
 同じぐらい衝撃的だったのが、ある高校の主力選手が手にしていた白い皮手袋をベンチに投げつけたこと。三塁からのタッチアップが早いと判定され、得点が取り消されたことに対する抗議だった。気持ちは分からなくもないが、甲子園のベンチは観客席にも丸見え。見ていて気持ちのいいものではない。審判に対する反応でいえば、ハーフスイングを空振りと判定され三振すると、両手を広げて主審に「なぜ?」というポーズをつくる選手もいた。

 プレーでは、相変わらず手を抜いて走る選手が多い。投手や捕手へのフライで一塁に走り出さなかった選手がいた。ともに、走者がいる場面。もちろん打球はフェアだ。落とせばチャンスは確実に拡大する。打ち損なった上に全力疾走するのは格好悪いと思うのかもしれないが、これは基本中の基本。徹底しなければいけない。1989年夏の甲子園で、その大会のスター選手だった上宮高の元木大介(元巨人)が八幡商高との試合で投手フライを打ち上げて走らず、おまけに投手が落球したためにベンチで山上烈監督に怒鳴られたことがあったが、怠慢プレーにはたとえ甲子園であっても監督は厳しい態度をとるべきではないか。
 ある県大会では主力選手が内野ゴロで一塁ベースを踏まずにベンチへ帰ったのを目撃したが、甲子園でもベスト8に進出した高校の投手が一塁走者時に、次打者の投手ゴロで後ろを振り返りながらほとんど二塁に走らない場面があった。「あんな走塁をして怒られないの?」と聞くと、「ピッチャーはVIPです」との答え。炎天下でスタミナの消耗を避けるためと理解はできるが、もう少し見苦しくない程度にお願いしたい。

■高校生にとって大切なものとは

 スター選手が不在といわれながら、今大会にも好選手は多くいた。投手では球速140キロは当たり前。145キロ以上をマークしたのも、伊波翔悟(浦添商高)、斎藤圭祐(千葉経済大付高)、鍵谷陽平(北海高)、中田廉(広陵高)、斎藤英輔(青森山田高)、福島由登(大阪桐蔭高)と6人もいた。打者も史上初の1イニング2本塁打を記録した坂口真規(智弁和歌山高)、大会新記録の個人1大会15打点、大会タイの3試合連続本塁打を放った萩原圭悟(大阪桐蔭高)、同じく3本塁打の筒香嘉智(横浜高)らをはじめ、上本崇司(広陵高)、浅村栄斗(大阪桐蔭高)らセンスを感じさせる選手が多くいた。大会新記録の60本塁打が生まれた一昨年から一転、昨年は低反発球が導入されて27本塁打と激減したが、今大会は史上2位となる49本が記録された。バットが改良されたといううわさもあるが、わずか1年で低反発球に対応してしまう技術の進歩は驚くべきこと。それだけ、高校生の技術も、高校野球のレベルも上がっている。

 だが、そんな時代だからこそ、もう一度、基礎や基本を見直してほしい。セカンド・町田友潤の超高校級の守備が目立った常葉菊川高は、ノックから内野手も外野手も絶対に高い送球をせず、低い送球を徹底していた。ある高校のセンターは強肩を披露しようと走者が走っていない本塁にダイレクト返球し、それがバックネットに到達。やらないでいい点を与えた場面があったが、常葉菊川高ではほぼそういうことはありえない。深い位置でのゴロや三塁線のゴロはすべて一塁へワンバウンド送球していたサードの前田隆一は、「そこに来たら、ワンバウンドで投げると決めてますから」と言っていた。ちなみに、倉敷商高戦では前田のワンバウンド送球をファーストの上嶋健司が落球。エラーが記録されたが、「あれはファーストが捕れない球じゃないです」と意にも介さなかった。それぐらい徹底している。今大会は中継につながず、無理にダイレクト返球をしたがために打者走者やほかの走者に余計な塁を与えるシーンが目立った。派手なプレーが目立つ常葉菊川高でも、基本的なことは決して怠っていないことを忘れないでほしい。

 甲子園に出られない学校の中にも、素晴らしいチームはたくさんある。むしろ、「あの学校が出るなら、あそこの学校に出てほしかったなぁ……」と思うことの方が多いほどだ。甲子園は全国からの代表校が集う場。代表である以上、恥ずかしくない行動をするのは義務。もちろん、手を抜いたプレーは必要ない。
 ことしも数々の素晴らしい試合を見せてもらった。何度も感動させてもらった。そんな高校生たちに感謝したい。
 でも、だからこそ――。高校生には、もう一度何が大切かを考えてほしい。指導者の方々には、技術面以外のしっかりとした指導をお願いしたい。そして、最後にひとこと。この言葉を全国の高校球児や指導者、すべての高校野球に携わる方々に贈りたい。
『全力疾走 走る姿を見ればその人の心が分かる』

<了>

田尻賢誉

1975年神戸生まれ。熊谷高、学習院大を卒業後、ラジオ日本勤務、アメリカでの日本語教師ボランティアを経て独立。スポーツジャーナリストとして高校野球、プロ野球、メジャーリーグなど幅広く取材活動を行っているほか、中高生、指導者への講演活動も行っている。著書に『あきらめない限り、夢は続く』(講談社)、『公立魂〜鷲宮高校野球部の挑戦〜』(日刊スポーツ出版社)など。最新刊『高校野球 弱者の戦法』が好評発売中。メルマガ版「タジケンコラム」は【00583010s@merumo.ne.jp】に空メールで無料購読できます。

このページのトップへ
日程・結果
【 第17日 】 8月18日(決勝)
結果を閉じる
【 第16日 】 8月17日(準決勝)
結果を見る
【 第15日 】 8月16日(準々決勝)
結果を見る
【 第14日 】 8月15日(準々決勝)
結果を見る
【 第13日 】 8月14日(3回戦)
結果を見る
第1試合関東一 1−3 浦添商
第2試合 青森山田 0−2 慶応
第3試合 東邦 5−7 大阪桐蔭
第4試合 横浜 3−2 仙台育英
【 第12日 】 8月13日(3回戦)
結果を見る
第1試合聖光学院 5−2 市岐阜商
第2試合 常葉菊川 11−9 倉敷商
第3試合 駒大岩見沢 3−15 智弁和歌山
第4試合 鹿児島実 3−7 報徳学園
【 第11日 】 8月12日(2回戦)
結果を見る
第1試合大阪桐蔭 6−5 金沢
第2試合 広陵 4−7 横浜
第3試合 仙台育英 6−4 福井商
【 第10日 】 8月11日(2回戦)
結果を見る
第1試合本庄一 0−4 青森山田
第2試合 慶応 5−0 高岡商
第3試合 清峰 4−5 東邦
【 第9日 】 8月10日(2回戦)
結果を見る
第1試合鹿児島実 4−1 宮崎商
第2試合 智弁学園 4−5 報徳学園
第3試合 関東一 5−2 鳴門工
第4試合 浦添商 12−9 千葉経大付
【 第8日 】 8月9日(2回戦)
結果を見る
第1試合福知山成美 1−2 常葉菊川
第2試合 佐賀商 0−2 倉敷商
第3試合 盛岡大付 3−8 駒大岩見沢
第4試合 智弁和歌山 5−2 木更津総合
【 第7日 】 8月8日(1回戦・2回戦)
結果を見る
第1試合菰野 1−4 仙台育英
第2試合 福井商 6−1 酒田南
第3試合 聖光学院 9−2 加古川北
第4試合 市岐阜商 4−3 香川西
【 第6日 】 8月7日(1回戦)
結果を見る
第1試合大阪桐蔭 16−2 日田林工
第2試合 桐生一 1−6 金沢
第3試合 広陵 8−5 高知
第4試合 浦和学院 5−6 横浜
【 第5日 】 8月6日(1回戦)
結果を見る
第1試合白鴎大足利 3−11 清峰
第2試合 東邦 15−10 北海
第3試合 大阪桐蔭 中止 日田林工
【 第4日 】 8月5日(1回戦)
結果を見る
第1試合本庄一 5−4 開星
第2試合 青森山田 2−1 日本航空
第3試合 慶応 6−4 松商学園
第4試合 大府 1−5 高岡商
【 第3日 】 8月4日(1回戦)
結果を見る
第1試合常総学院 5−13 関東一
第2試合 本荘 3−4 鳴門工
第3試合 浦添商 7−0 飯塚
第4試合 千葉経大付 3−1 近大付
【 第2日 】 8月3日(1回戦)
結果を見る
第1試合日大鶴ケ丘 1−14 鹿児島実
第2試合 城北 1−7 宮崎商
第3試合 智弁学園 5−4 近江
第4試合 新潟県央工 2−4 報徳学園
【 第1日 】 8月2日(1回戦)
結果を見る
第1試合 駒大岩見沢 8−6 下関工
第2試合 済美 0−3 智弁和歌山
第3試合 鳥取西 1−6 木更津総合

ブログ検索

お知らせ

携帯版スポーツナビ
携帯版スポーツナビにアクセス!

高校球児たちの夏が到来!
甲子園で繰り広げられる熱戦を
全試合速報します!
携帯へのアクセス方法

サイト内検索:  携帯版スポーツナビ携帯版スポーツナビブログ